＜国際親善試合：日本１－０キプロス＞◇２７日◇埼玉

　Ｗ杯を戦う上で今が一番きつい時期ではあることを承知の上で、あえて言わせてもらう。欧州組はシーズンが終わり、さらに鹿児島・指宿合宿でハード練習をこなしただけに、体が思うように動かないのは仕方ないけれど、工夫が少ないのは気になった。

　ザッケローニ監督はＷ杯メンバー発表後に「高さよりスピードで勝負する」ことを明言している。それは代表選手たちにも伝わっているはずだが、この日の立ち上がりはサイドからのクロスが目立った。前線に高い選手がいないのに、両サイドから中央に高いボールが上がっても、相手を脅かすことはできない。

　前半途中からは細かいパス交換からの中央突破が多く、チャンスを作る場面もあった。しかし、同じ攻めを続けすぎて、途中からは相手に読まれる場面が増えた。速いパスを中央だけに集中させず、ペナルティーエリア内の深い位置をえぐる１本があれば、中央に集まった相手ＤＦを散らすことができたはずだ。

　本番まで約半月。６万観客を満足させられなかった分、まずはしっかり体調を整えてほしい。その上で攻撃のバリエーションとセットプレーのオプションを増やし、Ｗ杯本大会では国民の期待に応えてもらいたい。（日刊スポーツ評論家）