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評論家

為末大学

為末大学

日刊スポーツ紙面の人気コラム「爲末大学」が登場します。陸上の元五輪選手でマルチな才能を発揮する為末大氏(36)が、大会を社会学的な見地か ら考察。W杯終了まで、日刊スポーツ紙面で毎週水曜日の連載です。

W杯終了後の数年間から我々が学ぶこと


 今回のW杯にかかった費用は、スタジアム建設費だけでも3500億円、関連費用を加えると1兆4500億円にもなると言われている。しかも国際サッカー連盟(FIFA)は開催国への金銭的支援をしないので、ほぼすべて自前でまかなわないといけない。

 あれだけサッカー好きのブラジル国民ですら、貧困、高い失業率などに苦しむ現状に「これだけの費用を費やす意味があるのか」と怒りの声を上げている。国であれ、企業であれ、使った費用に対しては、どのような効果があったのかを試算することが重要だろう。

 W杯にかかった費用は、一体どういうリターンを生むのか。1つには国に一体感が生まれる効果、また、この大会が来たことを機に都市計画が進むということも考えられる。大会期間中の観光経済も利益になるだろう。ブラジル政府は、2年後のリオデジャネイロ五輪と合わせて9兆円の経済効果があると言っているが、果たして本当にあり得るのだろうか。問題は、今回かかった費用を有形無形の効果が上回るのかという点に絞られる。

 僕はたった数週間のイベントだけでは、決して1兆4500億円というお金はペイしないと思っている。もっと長期的な視点で、何年も十数年もかけて回収するようなモデルになるのではないだろうか。

 一昨年のロンドン五輪は「レガシー(遺産)」をコンセプトに掲げた。五輪が終わった後に、何が残せるかという視点だ。コミュニティーの強化、運動をする人口の増加などをあげていたが、外から見ておそらく一番の成果はパラリンピックを成功させたことで、世界に存在感を持ったこと、また人々の意識が大きく変わったこと、インフラが整備されたことではないだろうか。おおむね市民は満足していると聞く。

 スポーツでお金の話をするなんてと思われるかもしれないが、既にスポーツは失敗すると大きな負担を自治体や国家が背負うほどの巨大ビジネスになっている。失敗だったと言われている1976年に五輪を開催したモントリオールが、借金を払い終えたのは2006年だった。それでもブラジルは、新興国で平均年齢も若く、労働人口も多い。イケイケドンドンの新興国型モデルでいくことは納得できる。

 ところが20年に五輪を控えている日本は労働人口が少なくなる上、高齢化して人口も減少している。そんな中、国の借金が1000兆円を超えるとなれば状況は厳しい。「お祭り」だけに巨額の費用をかけられるほど、余裕はない。

 東京五輪。いったい日本は何を残すのか。おそらくは巨額な予算をかけ準備をしていくのだと思うけれど、何でそれを回収するのか。20年までではなく、20年以降どんなビジョンを描くのか。状況の違いこそあれ、ブラジルW杯の最中よりも、終了後の数年間の方が、我々にとっては学びになるのかもしれない。(為末大 @daijapan)























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