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紙面企画

W杯のツボ

W杯のツボ

試合のプレー、珍プレーなどの出来事を掘り下げて検証する企画。南アフリカW杯の「スーパープレー、お宝発掘」をリニューアルし、スーパープ レーや勝負のあやに迫ります。

ボールを動かす省エネ戦術でイタリア1勝


<W杯:イングランド1-2イタリア>◇1次リーグD組◇14日◇マナウス

 W杯優勝経験のある強豪同士の対決は、イタリアが2―1でイングランドを下した。気温31度、湿度80%を超えるアマゾン熱帯雨林の中心に位置するスタジアムで、イングランドには疲労で足がつる選手が続出。片やイタリアは司令塔のMFアンドレア・ピルロ(35=ユベントス)を中心に「人ではなくボールを動かす」省エネ戦術で、大事な初戦を制した。

 信じ難い光景だった。1点を追いかける後半28分すぎ、イングランドMFジェラードが、パスを出した瞬間に突然止まった。足がつったのだ。敵陣中央で必死に足の筋肉を伸ばし、なんとかプレーに戻ったのは約3分後だった。34歳のベテランだけでなく、若手も軒並み疲弊していた。同点ゴールを決めた24歳のスタリッジ、19歳のスターリングまで、足がつって苦悶(くもん)の表情を浮かべた。

 その一方で、イタリアは35歳のベテラン、ピルロを筆頭に試合終了時まで涼しい顔でプレー。この差を生んだのが両チームの戦術の違いだった。イタリアのプランデリ監督は「中盤で優位を保ち続けることができた」と満足げ。相手のプレッシャーが軽い中盤深くに位置したピルロ、デロッシに徹底的にボールを集めた。人から人へ、2人が正確な細かいパスで試合を組み立てることで、周囲の選手が長い距離を走らずに済むよう工夫した。対照的に、イングランドはロングボールやクロスに合わせてゴール前へ飛び込む動きを繰り返し、徐々に体力をすり減らした。ホジソン監督は「今日は彼ら(ピルロとデロッシ)の技術に脱帽だ」と素直に負けを認めた。

 サッカーのデータ提供サイト「squawka.com」によると、ピルロが成功させたパスはちょうど100本。今大会プレーした全選手の中で堂々の1位だ。デロッシも99本で2位だった。対するジェラードは59本止まり。いかにイタリアが2人にボールを集め、そこから自在に試合をコントロールしていたかが分かる。

 米スポーツ専門放送局NESN(電子版)はこの一戦を「ピルロ率いるイタリア代表が、ジャングルの消耗戦に勝利した」と形容した。後半ロスタイムに、バーをたたく惜しいFKを放ったピルロについても「いつでも、どんな場所でも、どんな試合でもプレーできそうだった」と評価。伝統的な堅守速攻スタイルを捨て、ピルロを軸に「クールビズ」と言わんばかりの省エネパスサッカーを披露。マナウスの蒸し暑さを味方に、イタリアが絶好のスタートを切った。

 ◆マナウス ブラジル北部、アマゾナス州の州都。熱帯雨林アマゾンの中心に位置する。6~11月の乾季と、12~5月の雨季に分かれる。年間降雨量2500ミリを超える高温多湿の気候だ。6月の平均気温は31・0度で、一年中蒸し暑い。W杯で使用する「アマゾニア・アリーナ」は今大会の12会場で、もっとも北にある。南半球にあるブラジルは北へ行くほど暑く「もっとも暑いスタジアム」と言える。

















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