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紙面企画

W杯のツボ

W杯のツボ

試合のプレー、珍プレーなどの出来事を掘り下げて検証する企画。南アフリカW杯の「スーパープレー、お宝発掘」をリニューアルし、スーパープ レーや勝負のあやに迫ります。

ドイツ4点大勝、伝統刷新「ゼロトップ」


<W杯:ドイツ4-0ポルトガル>◇1次リーグG組◇16日◇サルバドル

 革新の伝統は健在だった。ドイツがポルトガルに圧勝し、W杯史上初の100試合到達を飾った。前回大会得点王のトーマス・ミュラー(24)が今大会初のハットトリックを達成。前線の選手が流動的にポジションを変える「ゼロトップ」システムで圧倒した。過去2大会連続3位。90年大会以来24年ぶり4度目の優勝へ、今回も最新トレンドを取り入れていた。

 ドイツが、変幻自在の「ゼロトップ」でポルトガルを辱めた。1点目はミュラー、エジル、ゲッツェの前線3枚が連係し、空けたスペースに走り込んだゲッツェが倒されPKを得た。2点目は、ボランチのクロースが中盤でボールを奪うと、瞬時に右サイドのエジルへ送る。ミュラーをおとりにエジルが折り返し、ゲッツェがシュート。DFに引っ掛かったが、直後に得点となるCKを獲得した。

 人とボールが動き、常にギャップを作る流動性と縦への速さ。これが今のドイツを支える2本柱だ。基本システムは「4-3-3」だが、本来2列目の前線3人がインサイドMFと絡んで「4-6-0」になる。ドイツの発表では、最終登録メンバー23人のうちFW登録はクローゼ1人だけ。「爆撃機」ゲルト・ミュラーやクリンスマンら、伝統的にセンターFWを置いてきた伝統を刷新する-。そんなメッセージを込めた。

 象徴が3得点のミュラーだ。形式上1トップだが、激しく位置を変え、前半の走行距離はチーム1位の6195メートル。サイドに開いてマークを引きつければ、ケディラらボランチも含めた複数選手が中央を突く。中盤に下がって組み立てに回れば、仲間が自分を追い越して的を絞らせなかった。

 ゼロトップはスペインが考案し、12年の欧州選手権を制した。それを就任8年目のレーウ監督が柔軟に取り入れた。その作業はドイツの歴史でもある。1934年の第2回大会から18度目の参加で、最速の通算100試合出場。1次リーグ敗退経験がなく、初優勝した54年から15大会連続で8強以上という安定した成績を残せたのは、最新トレンドに反応し、自国流にアレンジしてきたからだった。

 2度目の優勝となった74年大会は、70年大会を制したブラジルの4-3-3が参考。4バックの1枚をリベロ(ベッケンバウアー)に独自改良して席巻した。もともと強いフィジカルと精神力=ゲルマン魂があって忠実な国民性も生きた。

 本家スペインが衰退の一途をたどる中、欧州予選10戦36発の攻撃力を世界でも示したレーウ監督は「勝利しか許されない、と言って選手を送り出した」とポルトガル相手でも勝利を確信していた。西ドイツ時代の90年大会以来24年ぶり、かつ南米開催で初の欧州勢Vへ-。ドイツが狙える存在なのは、疑いようがない。

 ◆ドイツのフォーメーション変遷 54年にFW5人を置く「WMシステム」で初めてW杯を制した。選手の位置を結ぶと「W」「M」が浮き上がる同システムは50年代前半、無敵を誇ったハンガリーの代名詞。それを取り入れた。両サイドのFWがクロスを入れ2列目のインサイドFWに決定力ある選手を配した。

 2度目の優勝となった74年は「リベロ(自由)」のベッケンバウアーが最後尾から攻め上がり、規律ある4-3-3布陣を攻守に取り仕切った。90年の3度目の優勝時は両サイドバックのロイター、ブレーメを1つ前に上げた3-5-2布陣。中盤のマテウスを司令塔役に両サイドを広く使ったスタイルで、2トップのクリンスマンとフェラーの機動力を生かした。4年前の86年大会を制したアルゼンチンを参考にした。

<ドイツ記録メモ>

 ▼史上初の100試合 西ドイツ時代を含めて18度目の出場で到達。通算61勝19分け20敗。勝利数はブラジルの68勝に次いで2位だが試合数はブラジルの98試合を上回り最多。

 ▼7大会連続白星発進 90年大会からW杯初戦は7連勝で、通算13勝4分け1敗。4得点以上の白星発進は4大会連続8度目。過去7度のうち54、90年大会で優勝、準優勝が2度、3位も3度とすべてトップ3入り。

 ▼最多ハット ミュラーが今大会初のハットトリック。アルゼンチンFWイグアインが10年大会1次リーグ韓国戦で達成して以来、史上45人49度目。ドイツでは02年大会のFWクローゼ以来、国別最多6人7度目(FWゲルト・ミュラーが2度達成)。

















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