会社法違反(特別背任)などで起訴された日産の前会長カルロス・ゴーン被告(65)の弁護団が28日、都内の日本外国特派員協会で会見を行う予定を急きょキャンセルしたことを受けて報道陣の取材に応じた。

高野隆弁護士(62)は、ゴーン被告の保釈条件の中でキャロル夫人との接触の全面禁止という条件の変更について、東京地裁に3度目の申請をしながら、この日、棄却されたことについて「私は個人的に、一日本の弁護士として非常に恥ずかしいことだと考えています」と首をかしげた。同弁護士によると、5月に申請した際、1週間程度の期間に1日1回1時間、弘中惇一郎弁護士(73)の事務所で、弁護士が監視した状態でゴーン夫妻が会うという条件を提示したが認められなかったという。その後、2度の申請では

<1>キャロル夫人が来日した際は、弁護団が用意した携帯電話以外は使わない

<2>通話履歴は全部、記録して裁判所に提出

<3>面会記録についてもゴーン被告同様に記録して提出

<4>離日後も、キャロル夫人が使っているコンピューター、電話の記録は、必要があればいつでも提出

<5>キャロル夫人が証拠隠滅行為などの違反を行った場合、弁護士が裁判所に通報

という条件を提出したという。キャロル夫人は「それでもいい」と誓約書にサインして、弁護団と一緒に裁判所に提出したという。

高野弁護士は「簡単に言うと、彼女が誰かとコミュニケートしたらそれは全部さらけ出される。検察官のいう証拠隠滅行為をやったとしても、その痕跡を全部さらけ出しますよということ」と声を大にした。東京地検からは1週間程度の期間に1日1回、1時間というところから条件から拡大したとの指摘があったとした上で「条件が広がっていると評価するのは、明らかに間違いと私は思う。むしろ自分の自由の大切な部分を、全部さらけ出して制限して、それでも夫と会いたいという気持ちを彼女は表明したわけですね」と力を込めた。

弘中弁護士も棄却に対して「何とか通るだろうという期待を強く持った」と失望感をあらわにした。同弁護士によると、公判前整理手続きで提示された検察官の証明予定事実の中で、キャロル夫人の扱いが小さく、証人として予定している人物は通常、供述調書なりが証拠申請されるが、そうしたリストにも全く出てこなかったため、期待は大きかったという。同弁護士は「キャロルさんは無視してもいいくらいの小さな存在ということが明らかになったし、証人として予定されてもいないことが事実上、分かった。その点を裁判所にアピールした。在所隠滅うんぬんは、その事件の中で重要な位置を占めているということが普通は前提で、それがないことが明白になった」と訴えた。棄却の理由については「理由の説明はないから、よく分からない」と口にして失望感をにじませた。【村上幸将】