新型コロナウイルスのまん延で4月から新規開業の予定を順延していた東京・築地の人気飲食店の集まったフードコートが、6月1日から再始動する。

中央区の管理する1階に市場機能を持つ「築地魚河岸」の3階は「魚河岸食堂」との名称で人気店が並ぶフードコートになっていて、6月1日から再スタートを切る。4月7日の非常事態宣言を受けて、長期休業をしていた。

「鳥藤(とりとう)」の鶏そば専門店、とんかつ「小田保(おだやす)」、洋食「東都グリル」、喫茶「センリ軒」の既存店の他に新たに、マグロの仲卸の名店「樋栄(ひえい)」の手掛ける「てっか屋」、創業128年の「築地藪(やぶ)そば」が加わる。

「てっか屋」は4月から開業準備を進めていたが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、看板だけが設置され、何も前に進めなかった。

樋栄の4代目楠本康太社長は「マグロの食べ方はいろいろ提案してきたけれど、飲食店としてマグロを提供するのは初めての経験になります」と話す。最高級の本マグロも扱うが「豊洲で目利きしたおいしいマグロを食べていただきます。ウチの鉄火丼を食べるごとに生マグロの本当のうまさを感じてもらうと思うとワクワクしてしょうがない」と瞳をらんらんとさせた。

本マグロだけではなく、メバチ、インド、キハダなど季節に応じて脂乗りは違ってくる。その日のもっともおいしい生マグロを切り分けて丼をつくる。「これで1500円。マグロのブツと長ネギのザク切りをみそ汁にしたネギマ汁もおいしいですよ」と4代目はメニューに自信をのぞかせた。

また「砂場」「更科」と江戸三大そばに数えられる「築地藪そば」はこれまで慣れ親しんできた場所を完全に引き払って、退路を断って築地魚河岸3階に新店をオープンさせる。

鵜飼建三社長は、築地の持つ時間の壁を打ち破ることを目標としている。「築地は午後2時を過ぎると食べて飲める店はほとんどない。ウチは昼休みを取らず朝7時に開店したら、閉店までの午後7時まで楽しく飲食してほしい」と真剣な表情で話す。

藪そばは、そばの実の薄皮をはがずに粉にして麺にする。深みのあるそばの味に対抗するように、つゆはかつお節の濃い香りと濃口しょうゆで仕上げる。「から汁」とも呼ばれ、おいしいつまみにもひと役買っている。「から汁を使う料理のふくよかさを感じていただきたい。それと、世の中にフードコートはいろいろあるけれど、チェーン店はなくて、この場所に来ないと食べられないメニューばかり。ウチもここ(築地魚河岸)の1階の仲卸店から魚や野菜を仕入れておいしいそばを提供していきたい」と鵜飼社長はやる気満々だ。

本物を食べられる築地ならではのフードコートがパワーアップして6月1日に再び動き始める。