参院選(10日投開票)宮城選挙区(改選数1)は遺恨試合の様相となっている。前回は野党共闘で当選も、今回は国民民主党を離党して自民党公認で5選を狙う桜井充氏(66)に対し、立憲民主党は4男4女を育てる愛称「ビッグマミー」の小畑仁子(きみこ)氏(44)を擁立。接戦が見込まれ、公示日には自民党総裁の岸田文雄首相(64)と、立民の泉健太代表(47)が応援演説に入ったほか、5日も安倍晋三元首相(67)と泉代表が宮城入りするなど、連日にわたって両党幹部が駆けつけている。

桜井氏は98年参院選に旧民主党公認で初当選。前回16年には旧民進党から野党統一候補として4選を果たした。だが、20年5月に野党統一会派を「与党に行かないとなかなか仕事が出来ない」などとして自民会派入りを決断。今年4月に公認争いを制して正式入党しての参戦に「自立出来る国家を実現出来るのは政権与党。きちんとした政策を打ち立てていきたい」とアピールする。岸田首相も「野党の時は手ごわい相手だったが、味方になれば心強い」と歓迎した。

泉代表は「6年前に野党が力を合わせて獲得した議席。政治家の身勝手で所属政党を変えることは、あるべきことではない」と憤りを前面に出した。県連会長の安住淳前国対委員長(60)も「こんな時だからこそ、暮らしに根差した候補者を出したかった。宮城県だけは絶対に負けられない」。看護師歴20年で県議も務め、子育て真っ最中の小畑氏をバックアップするため、共産党や国民民主、連合とも支援に合意して共闘態勢を再び整えた。

小畑氏は「私がいま生活に困っているから選挙に出る。誰も変えてくれないから生活者の声で私が変える」と国民目線での国政進出に意気込む。1日2回の洗濯に、スーパーでの買い物は両手に4袋。高2の長男が毎日1時間の自転車通学で家計をやりくりしており「子どもを産めば産むほど生活が苦しくなるのはおかしくないですか? 子どもは宝」と、児童手当拡充や、給食費無償化などの政策を訴える。

桜井氏の演説を聴く60代男性は「以前『与党に行かないと仕事が出来ない』と言っていた。それであれば自民党での仕事に期待したい」。一方で70代の男性は「与党の考えを覆してほしいからずっと投票してきた。完全に裏切り行為」と批判した。立場を変えたベテランと、育児と仕事を両立する母が対立するバトルは最終ラウンドに突入する。

 宮城選挙区には維新の平井みどり氏、N党の中江友哉氏、参政党のローレンス綾子氏が立候補している。【鎌田直秀】