4輪オフロードレース「ボルネオサファリ・インターナショナルオフロード・チャレンジ」の初日は、マレーシア・サバ州の州都コタキナバルの郊外にある山岳地帯で4つのタイムトライアルを消化し、キャンプ地を目指した。

この日の野営地はさらに約30キロ北上したトブロン村にある海岸エリアだ。舗装された一般道をひた走るため運転は楽だ。現地の到着予定時間は午後5時。夕刻だ。ただ、ここで仲間のある言葉が気になっていた。

「今夜のキャンプサイトはビーチらしいぞ」

標高600メートルの山を一気に登り、下ると潮の香りがする。海が見えてきた。砂利道に白い砂が混じりはじめた。眼前には海水浴ができるであろう澄んだ海と白浜が延々と続いている。コテージが点在しているのを見ると、どうやら公営のキャンプ場のようだ。やはりそうだったか…。

ビーチだと何が困るのか? それはモチベーション。行く手を阻むルートを、ウインチ(巻き揚げ機)を駆使して前進し泥と格闘する。そのイメージが初日から崩れてしまった。まるでバケーションのよう。海岸線に沈む夕日がなんと美しいことか。いやいや違う。ご褒美のビーチは、身も心も疲れ切って放心状態にあるレース最終日にしてほしかった。(つづく)