剛腕健在! 内田博幸騎手(52)騎乗の9番人気シャンパンカラー(牡、田中剛)が中団後方から残り100メートルで先頭に立って押し切り、3歳マイル王の座に就いた。勝ち時計は1分33秒8。

内田騎手は16年前の07年に17番人気ピンクカメオと雨中の決戦を制覇。18年フェブラリーSノンコノユメ以来5年ぶりのG1制覇で、ベテランここにありを見せつけた。

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傘をたたく雨音が新たな王者を祝福する。泥を浴び、鮮やかな青と白の勝負服は茶色に染まった。内田騎手がシャンパンカラーとともに、ファンの声援に応じた。内田騎手は「子どもとかがね、手を振ってくれると本当に力になりますよ。そういうのが刺激になって、こういう舞台を勝ってファンに恩返しができた」と喜びをかみしめる。雨中の追い比べを残り100メートルで先頭に立って押し切った。

あの時も、雨だった。ゴールデンウイーク最終日の3歳マイル王決定戦。07年にも17番人気ピンクカメオで勝利を飾っていた。序盤の状況は16年前と酷似していた。道悪を先行馬が前半1000メートル58秒台で飛ばすハイラップ。大外一気の当時とは違う、この日は後方待機での早め先頭で勝負を決めた。「早めに抜け出さないように周りを見ながら追いだしを待った。自分が思っていたより、反応が良かった」。外ウンブライルの追い込みを気にするほど、心の余裕があった。

2度目のNHKマイルC制覇。前回優勝は人生を考えるきっかけを与えてくれた。「移籍を意識する気持ちが芽生えたレース。あの頃は地方でやり尽くした感があったから」。大井のトップ騎手として君臨した後、08年にJRA騎手へ。09年にJRAリーディング、10年エイシンフラッシュではダービーも勝った。思い出のレースを勝ち、ふと今を見る。「時代はスイッチしている。自分も30代前半の頃に先輩を押しのけていった。でも、馬が回ってきた時に結果を出すのがベテラン。技術は負けないですよ」。50歳を過ぎても、若手には負けない。この思いだけは変わらない。

G1優勝は18年フェブラリーSノンコノユメ以来、5年ぶり。東京マイル3戦3勝でタイトルを取った相棒にかける期待は大きい。「バネが良くてストライドがいい。初めて調教に乗った時に『3歳!?』って思ったくらい。1度、2度、3度と、また称号を取ってもらいたい」。人馬は上を見続ける。鈍色の雲の下、内田騎手の笑顔がパッと輝いた。【松田直樹】

◆シャンパンカラー ▽父 ドゥラメンテ▽母 メモリアルライフ(レックレスアバンダン)▽牡3▽馬主 青山洋一▽調教師 田中剛(美浦)▽生産者 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 5戦3勝▽ 総取得賞金 1億6548万7000円▽馬名の由来 最上級のダイヤモンド