目指すは世界の名スプリンター! 6番人気のマッドクール(牡5、池添)が、重賞初制覇をG1で飾った。

内々の好位につけて直線で早めに抜け出し、猛追してきたナムラクレア(牝5、長谷川)を頭差でしのいだ。JRA・G・15勝目となった坂井瑠星騎手(26)が「まだまだ伸びしろがある」と期待を寄せる大器。これからのスプリント界をけん引する存在になりそうだ。

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降り続く雨の中、芦毛の馬体が突き抜けた。猛追してきたナムラクレアとは頭差。「最後すごい勢いで迫ってきたので、分からなかったけど、なんとか勝ててよかった」。坂井騎手はホッとした表情を見せる。

好発を決めて内の3番手を追走した。内が残る馬場を把握していた。「一番理想的なポジションが取れた。直線でも内ラチぎりぎりを攻めていけたし、思い通りのレースができた」。激しく芝が飛び散るタフな馬場だったが、早めに抜け出して力強く押し切るマッドクールの顔は、ほとんど汚れていなかった。

22年5月。中京の未勝利戦を5馬身差で勝利した際に、鞍上と担当者は「高松宮記念に行こう」と大きな目標を立てた。昨秋のスプリンターズSでは鼻差の2着も、今回で見事リベンジ。2年前の言葉を、最高の形でかなえてみせた。

今回は休み明けでプラス18キロの540キロで、同レース優勝馬の最高馬体重を更新。池添師は愛馬のスケール、そしてポテンシャルの大きさに、1つの願いを持っていた。「本当に大きな雄大な体で、今後種牡馬になってほしい1頭」。父ダークエンジェルは英国のスプリントG1馬だ。昨年の香港遠征も「香港のスプリント勢は強いので、結果を出せれば種牡馬としての道が開ける」という理由で参戦を決定。8着に敗れはしたが、強敵にもまれて力をつけた。タイトル奪取で、願いもグッと近づいた。

2歳時から膝が弱く、厩舎の丁寧な調整が実を結んだ。5歳でG1初制覇も、まだ未完成。「持っているポテンシャルは高いし、まだ完成ではない。もうひと段階成長できる」と師は伸びしろを伝える。

今後は馬の様子を見て決定するが、4月28日香港のチェアマンズスプリントプライズ(G1、芝1200メートル=シャティン)も視野に入る。歴史に残る名スプリンターへ。タイトルを手にした大物が、スター街道をぶっちぎる。【下村琴葉】

◆マッドクール▽父 ダークエンジェル▽母 マッドアバウトユー(インディアンリッジ)▽牡5▽馬主 (有)サンデーレーシング▽調教師 池添学(栗東)▽生産地 愛国▽戦績 12戦6勝(うち海外1戦0勝)▽総獲得賞金 3億3346万6000円▽馬名の由来 マドリードで毎年夏に開催される音楽フェスティバル