梅雨入り前の6月2、3日に開催された「BRM602 西東京600km諏訪湖」に参加した。町田をスタートし、伊豆・修繕時を経由し、沼津、富士を走った後に北上。諏訪湖で折り返し、芝川まで戻って朝霧高原を上って道志みちを町田まで帰るコース。2日目の夜明けに400キロ地点を無事通過。残るは200キロ。いよいよラスボス朝霧高原に挑む。


2日目の夜明け、富士川沿いで朝日を浴びる
2日目の夜明け、富士川沿いで朝日を浴びる

 午前4時27分、404キロ地点の釜無川にかかる三郡橋で夜明けを迎えた。進行方向でいうと、三郡橋の手前が釜無川で向こう側が笛吹川。この少し下流で合流し、富士川となる。


 川沿いを少し南下して右手に寿司屋「しん坊」、左手セブンイレブンのところを左折する。ここは青葉ブルベで何度か走っているが、明るい時に通るのは初めて。なるほど。こういう世界だったのか。上りだが気持ちのいい道が続いていく。


午前4時53分、四尾連湖への分岐
午前4時53分、四尾連湖への分岐

 途中で「四尾連湖」への分岐発見。「しびれこ」と読むらしい。面白い名前だが、7キロじゃ行けないね。後で調べて見ると、「神秘と伝説につつまれた、山梨県でも有数の景勝」で「四つの尾を連ねた竜が住んでいることから四尾連湖といわれるようになった」と市川三郷町のホームページで紹介されていた。標高850メートルの山上湖なので、7キロ上るということかな。


 峡南橋で富士川を渡り、国道52号に出て右岸を南下する。


午前5時7分、峡南橋を渡る
午前5時7分、峡南橋を渡る

午前5時9分、国道52号を走る
午前5時9分、国道52号を走る

午前5時15分、お日様も顔を出してきた
午前5時15分、お日様も顔を出してきた

 426キロ地点の上沢橋手前のセブンイレブンで小休止。ここにもメガシャキガムはなかったのでブラックアンドブラックを買った。おにぎりを1つぱくつき、冬衣装をすべて脱いで半袖レーパンで走り出したが、少し寒さを感じたので走り出してすぐの冨山橋の先でストップし、ニーウォーマーとアームウォーマーを着けた。


午前5時54分、冨山橋を渡る。トンネルを直進すると本栖みち
午前5時54分、冨山橋を渡る。トンネルを直進すると本栖みち


 眠気と戦いながら黙々と走る。


午前6時17分、身延の峠を上る筆者(撮影 AJ西東京・埴谷さん)
午前6時17分、身延の峠を上る筆者(撮影 AJ西東京・埴谷さん)

 身延の先の峠のピークに諏訪湖で会ったスタッフがいたので驚いた。ほとんどのPCでも巡回している別のスタッフがいたし、2日間しっかりとつき合ってもらい、本当に元気が出たし楽しめた。ここでも写真を撮ってもらい、すれ違いざまにハイタッチしたのだが、力強すぎ。こっちはヘロヘロなんだからお手柔らかに(^_^;


午前7時18分、稲子手前の下り坂
午前7時18分、稲子手前の下り坂

【PC6 460・0キロ ファミリーマート富士宮芝川店】午前7時42分(貯金4時間2分)


 内船でトイレ休憩しただけで走り続け、460キロ地点のPC6には午前7時42分に到着した。往路で通り過ぎて以来、16時間半ぶりに戻ってきた。


 稲子付近で交通事故死していたタヌキが往路で反対車線にいたので、復路では乗り上げないように気をつけようと思っていたが、なぜか復路でも反対車線にいた。どうやって移動したんだろう。


 ちなみにこのブルベで生きているタヌキとは2度出会った。真っ暗な八ケ岳高原ラインで出会ったタヌキは、ライトが照らす明るい方へ逃げ続けるので困った。


 PCには1人が先着していただけ。夜を過ぎてようやくばらけてきたかと思ったが、ハムチーズたまごサンドとアクエリアスを補給していると、何人かが滑り込んできた。


 さて、いよいよラスボス朝霧高原。暑くなり始めていたのでアームウォーマー、ニーウォーマーを脱いで半袖ジャージーにレーパンスタイルになりリスタート。コンビニの裏に回り、踏み切りを渡ると、いきなり直線の急坂が始まった。


午前8時7分、PCを出るといきなり直線の急坂
午前8時7分、PCを出るといきなり直線の急坂

 国道139号のピークまでは約23キロ。まずは県道75号を5・6キロ上る。


午前8時20分、県道75号の上り
午前8時20分、県道75号の上り

 国道469号の分岐までの7キロが23分かかった。


午前8時30分、国道469号の分岐。ここを右折する
午前8時30分、国道469号の分岐。ここを右折する

 国道469号へ右折すると、心を折らせる直線の上りが待っていた。だが、右手を見ると富士山だ! このブルベで初めて目にすることが出来た。


午前8時30分、国道469号の直線の上り。右手には富士山が見えた
午前8時30分、国道469号の直線の上り。右手には富士山が見えた

 直線の上りを上り続け、ようやく県道7号との分岐。国道469号に入ってからここまでの上り3・9キロは24分かかった。つまり時速10キロ以下。眠気も吹き飛ぶつらさだ。


午前8時54分、県道184号への分岐
午前8時54分、県道184号への分岐

 県道184号への分岐にさしかかる。キューシートには「見逃し注意・右側水口商店GS」とあるが、歩くより遅いスピードなので見逃すはずがない。


 左折すると200メートルほど平たんだが、その先を右カーブした道はぐいっと上に上って入る。ピークまで残りはあと12・3キロだ。


午前8時55分、県道184号に入ると200メートルほど平たん
午前8時55分、県道184号に入ると200メートルほど平たん

 距離的には半分過ぎ、平たんになったのでここで足付き。ひと息ついていたら、歩いていた地元の女性に「どこまで行くんですか?」と声をかけられた。ブルベを説明しても理解不能だと思ったので、とりあえず「本栖湖まで行きます」と答えると、「ずっと上りだよ」と教えてくれた。あぁ、ずっと上りなんだ、やっぱり(T_T)


 この先もほぼ直線の上りが延々と続いた。時速は5〜8キロ。遅々として進まない。12キロが果てしなく遠く思えた。心は何度も折れそうになったが、幸いにして足もつらず、腰も痛くならなかったので上り続けることができた。


午前8時59分、県道184号の上り
午前8時59分、県道184号の上り


午前9時34分、心を折らせる県道184号の上り
午前9時34分、心を折らせる県道184号の上り

 途中で「峠の茶屋」があった。ん? ということはピーク? 少し喜んだが、峠の茶屋を過ぎても道は容赦なくぐいぐい上っていった。


午前9時36分、峠の茶屋
午前9時36分、峠の茶屋

午前9時39分、上り続ける県道184号
午前9時39分、上り続ける県道184号

 自分と戦いながら黙々と上り続ける。


 ようやく視線の先に国道への分岐が見えてきた。しかし、それは200〜300メートルある直線の先。せめてつづら折りにして欲しかった。

 

午前10時9分、国道139号への分岐までの最後の直線の上り
午前10時9分、国道139号への分岐までの最後の直線の上り

 ヘロヘロになって国道139号にたどりついた。PCからここまでの23キロで2時間強。長いラスボスとの戦いはようやく終わった。交差点にパラグライダー・スクールの駐車場があり、たまらずへたりこんだ。


 ここでふと気がついた。サドルバッグの重量はスタート時点で3・3キロ。これだけでもいつもの休日ツーリングよりかなり重い。さらにこの時点では長袖インナーやウインドブレーカーは汗を吸って重量が増していると思われる。ということは…。帰宅して測ってみると3・5キロ。ずしりとくるはずだ。


 朝霧高原は07年11月の神奈川ブルベ富士山1周走行会で初めて下った。そのときは県道71号だったが、本栖湖の絶景ポイントからは豪快な20キロの下り。漕がなくて時速40〜50キロの世界で、周囲に広がる風景も北海道のようで最高だった。やっぱり朝霧高原は上るんじゃなくて下るものと、改めて強く思った。


 国道139号に入っても上りは続く。このあたりは以前のブルベでも走ったことがあり、記憶をたどるとたぶん本栖湖まで上りは続くはずだ。距離は10キロぐらい。県道184号よりは傾斜は緩いが、楽といえるほどではない。おまけに路肩が狭く走りづらい。右手にあるはずの富士山も雲の中。意外とつらい区間となった。


午前10時19分、富士山は雲の中
午前10時19分、富士山は雲の中

午前10時33分、本栖まであと6キロ
午前10時33分、本栖まであと6キロ

 本栖まではずっと上りだと思っていて、「本栖まであと6キロ」と標識が出たときは凹んだが、残り2キロとなって富士河口湖町に入ると道は突然、豪快に下り始めた。まさにうれしい誤算。そこからはあっという間に本栖交差点に着いた。ここで約500キロ。走行時間は約30時間。厳しい上りはほぼ終了し、残りはようやく100キロ。あと5〜6時間でゴールできそうだ。


 左へ曲がると本栖湖が見えるがそこまでの余裕はなく、そのまま直進。コースはここから精進湖、西湖、河口湖、山中湖と富士五湖をめぐるようになっている。


午前10時53分、本栖交差点手前
午前10時53分、本栖交差点手前

午前11時5分、精進湖への分岐
午前11時5分、精進湖への分岐

午前11時25分、西湖からは富士山がくっきり
午前11時25分、西湖からは富士山がくっきり

午前11時54分、河口湖。富士山には雲がかかっていた
午前11時54分、河口湖。富士山には雲がかかっていた

 本栖から精進湖、西湖へは上り基調。青木ヶ原大橋がきつい。西湖への分岐を左折すると下り。西湖からは富士山が綺麗に見えた。この時がこのブルベで唯一の「富士山ば〜ん」。


 西湖は10年11月に行われたツール・ド・ジャパン西湖ステージ以来の訪問だったが、路面が荒れていてびっくり。よくこんな路面でレースをしたもんだと感心した。


 西湖から河口湖へは気持ちのいい下り。残念ながら河口湖では富士山に雲がかかり始めていた。


 長い新倉河口湖トンネルは上り基調だと勘違いしていて、ちょうど追いついたブルベライダーが歩道を走っていたので、ならって歩道へ。しかし、下り基調なので車道でも良かった。スピードが出すぎて危険だし、パンクしそうで怖い。


【PC7 519・5キロ セブンイレブン富士吉田旭3丁目店】午後0時24分(貯金3時間16分)


午後0時50分、最終PCに到着した筆者(撮影 AJ西東京・田中(敦)さん)
午後0時50分、最終PCに到着した筆者(撮影 AJ西東京・田中(敦)さん)

 PC7にはお昼どきの午後0時24分に到着。貯金は3時間16分とかなり減ったが、道志みちの下りがあるのでもう大丈夫だ。イートインがあったので、座って野菜あんかけ焼きそば、お気に入りになったスコールメロンを補給。デザートは今ブルベ2度目のクーリッシュ。


 さて、残りの上りは山伏峠だけと思われがちなのだが、それはちょっと違う。砂原橋東を右折し、国道138号へ出る鐘山通りがあり得ない急坂。それが2・7キロずっと続く、れっきとした峠だ。おまけにほぼ直線なのできつさが増してくる。山伏峠は何度も上っていて慣れているし、傾斜もそれほど急ではない。ここが最後の難関。というかイヤなところ。


 実は最初に出たキューシートでは、砂原橋東を右折した後、途中の鐘山スポーツセンター前を左折するコースになっていた。16年に青葉ブルベの道志みち200で一度走ったことがあるのだが、ここは曲がった途端、12%の激坂が待ち受けている。上った後に忍野八海に出るルートなので魅力的なのだが、できれば避けたい(^_^; すると、試走を行ったスタッフの「十分上りを上ってきたのに、最終PCの後にまた激坂を上らせるのか」という直訴が受け入れられ、この坂を上らず鐘山通りを直進するコースに変更されたのだ。スタッフのIさんに感謝! ちなみに「アオバヒドイ」が真骨頂の青葉ブルベだとこういうことは絶対起きないだろうな。


 国道138号へ出たところは道の駅富士吉田の少し先。ここからも上りは続く。緩やかだが、もう疲労困憊なのでスピードは出ない。530キロ地点の高速の山中湖インターから道は下ってくる。残りは70キロの下り基調。このブルベの終わりをようやく実感した。残っている上りは「ママの森」、山伏峠、宮原を左折した後の3つだ。


午後1時36分、山中湖からの富士山。♪あ〜たまをく〜も〜のう〜えに出し
午後1時36分、山中湖からの富士山。♪あ〜たまをく〜も〜のう〜えに出し

 富士山が見えて気持ちいいのだが、もう体はヘロヘロで平地でも時速23キロ前後しか出ない。


 平野を左折し、ローソンで最後のトイレ休憩。山伏峠を上り、トンネルではストップせずそのまま下って行く。


 日曜とあって車の通行量は多いが、それにもまして多かったのがモーターバイク。道の駅どうしの駐車場の大半をモーターバイクが占めていたの見た時は驚いた。人気が再燃しているのだろうか。


 この日は青葉ブルベの伊那600も同時開催されており、最後は道志みちで同じ。スタート前のブリーフィングで「間違えてついて行くと、稲城にゴールするので認定されませんよ」などと注意され笑いが起きた。ただ終盤が多少コースが違い、こちらが青山まで直進するのに対し、青葉は梶野の先を右折して小さな峠を越え、関に出るいつものコース。個人的にはどちらかというと青山まで行く方がいいのだが、この日は車の通行量が多かったので峠越えの方が良かった。また、国道412号からは串川橋を左折するのだが、青葉は長竹三叉路を左折し、5%の気持ちのいい下りを新小倉橋まで行くルート。これは下りに入ると新小倉橋まで漕がないでいいので、断然長竹三叉路左折がいい。


 下り途中の大渡の湧き水をボトルに詰め、ゴールを目指す。


【ゴール 601・1キロ 今野製作所駐車場】午後5時14分(貯金3時間46分)


午後5時14分、ゴール直前の筆者(撮影 AJ西東京 井出さん)
午後5時14分、ゴール直前の筆者(撮影 AJ西東京 井出さん)

 午後5時14分、明るいうちにゴール。タイムは36時間14分。最後の200キロも13時間かかったが、自分としてはまずまずのタイム。もう1〜2時間は休めたかもしれないが、トラブルがあったらと思うと、どうしても先を急いでしまう。


 これで3年連続7度目の600キロ完走。やはり達成感はひとしお。今年で還暦だが、1年でも長く600キロに挑戦していきたいものだ。


 体のダメージとしては右肩痛、腰痛、両足のヒザ裏痛(特に右)、ケツの筋肉痛(特に左)、両方の二の腕痛、両手小指にしびれ、右足裏のしびれ、首痛と満載で、日が経つにつれてひどくなったものもあったが、走行中は致命的な痛みにはならなかったのは幸いだった。また、各PCでちゃんと食事が摂れた初の600キロブルベになった。太ったかなと思ったがそうでもなかった。日焼けで真っ黒になったが、なぜかお風呂に入っても痛くなかったのは年のせい?


 さて、2年ぶりのスーパー・ランドナー(SR)へ残るは300キロ。イッキに達成を狙い、3週間後のランドヌ東京のBRM623神流川300にエントリーしていたが、雨予報に負けてDNS。お楽しみは秋へ持ち越しとなった。(この項終わり)【メディア戦略本部 石井政己】