コロナ感染拡大を考えて日本一周を来年へ延期にしたが、体力維持をするため、関東近郊は走ろうと思っている。自転車で単独行動、自然の中を走るならコロナ感染のリスクは少ないはず。さらに出会った人との会話も最小限、僕なりにコロナ感染対策は継続している。ちなみに2回目のワクチン接種も8月中旬に無事完了した。

さて、E-Bikeの最大利点である電動アシストの恩義を最も受けられるのが「登り坂」。例えば、スタートからひたすら登り続ける旅というのはどうだろう? 大変そうだけど、わかりやすくて面白そうだ。そこでひらめいたのが、0mの海岸から富士山スカイラインを登って新富士五合目(標高2400m)を目指す旅。よし決めた、次はこの旅だ。

ルートは最短距離の田子の浦~富士宮~富士山スカイラン(富士山新五合目)と考えたが、ネット検索すると運悪く土砂流出で富士山スカイラインの一部が通行止めになっていた。無理と諦めかけたが、御殿場経由なら新五合目まで行けることがわかった。距離は20キロ以上長くなるが、チャレンジしてみよう。

朝5時半。静岡県沼津市の美しい海岸線、白砂青松100選にも選ばれている景勝地「千本松原」にやってきた。ここが今回の出発地となる。目標地の富士山を見ると頂が微かに白くなっていた。実はこの日の朝、富士山が平年より25日早く初冠雪を記録。初冠雪の日に富士山の旅することになるとは、何て運がいいんだろう。きっとこの旅はうまくゆく、そんな気がした。


松林が続く千本松原がスタート地点。ここから富士山新五合目を目指す
松林が続く千本松原がスタート地点。ここから富士山新五合目を目指す

沼津港の周辺を軽く走り体を温める
沼津港の周辺を軽く走り体を温める

港大橋から狩野川と遠くに聳える富士山を望む
港大橋から狩野川と遠くに聳える富士山を望む

今回の旅では特別ルールを設けることにした。使えるのは装着しているバッテリー1本のみ。もし途中でバッテリー電力を使い切った場合、またはペダルをこげなくなったら、そこで今回の旅は終了というルールだ。ちなみにE-Bikeを降りて押して登るもNG。果たしてこのルールの元で富士山新五合目まで登れるのか? 還暦男の無謀なチャレンジがいま始まった。

僕が乗っているヤマハのYPJ-TCの電動アシストは「HIGH」▶「STD」▶「ECO」▶「+ECO」▶「OFF(アシストなし)」の5段階。強いアシスト力が得られるモードほど、電力の消費量も多くなるので、節電を考え「ECO」モードにセット。坂の傾斜や体力の状況をみながら進んで行く。

静かな沼津の町を抜けて、国道246号を御殿場方面へ向かう。道は徐々に緩やかな登り坂。走り始めると予想以上に風が冷たい。ペダルを止め、長袖Tシャツの上にジャージーを羽織る。御殿場まで国道246号一本で行けると思っていたら、自転車通行不可の標識が現れた。仕方なく側道を進んで行く。道はしばらく並行して延びていたが、途中からどんどん別の方向へ延びていく。「んんっ? これはヤバいかも!」と直感、スマホでチェックすると案の定、道は全く別方向へ向かっていた。慌ててUターン。住宅地の細い道をジグザグに繋ぎ合わせて進んで行く。学校へ向かう子供たちが元気に歩道を走って行く。日常の景色を眺めながらゆっくりとペダルをこいだ。

しばらく走ると再び国道246号に出ることができた。歩道があるので、歩行者も自転車もOKのようだ。よかった。国道246号はとにかくトラックが多いので、注意しながら進んで行く。左手に富士山が見えるはずだが雲に隠れて全く見えない。2時間前はクッキリ見えていたのに、もしかして五合目まで登っても、雲で何も見えないかも。少し不安な気持ちになった。だが今はそれよりなにより、朝めしが食べたい。国道沿いにあるかと思っていたが、適当な店が全然見当たらない。「チクショー」怒りを力に変えてペダルを踏む。

しばらくすると駒門PAが見えてきた。「やったー!朝めしが食えるぞ!」フードコートに入りメニューを確認すると、ボリューム満点の焼魚定食があった。迷わず注文。焼き鮭が2切れに納豆、温泉卵に小鉢まで付いている。ここまで頑張って来て良かった!と心から思った。おなかいっぱいになると元気も満タン。さあ、走るぞー!


国道246号をたどればいいと思っていたら「ここから歩行者軽車両は通行できません」の文字が…
国道246号をたどればいいと思っていたら「ここから歩行者軽車両は通行できません」の文字が…

駒門PAでようやく朝ごはんを食べることができた!
駒門PAでようやく朝ごはんを食べることができた!

国道246号はトラックの交通量が多いのでヒヤヒヤだ
国道246号はトラックの交通量が多いのでヒヤヒヤだ

バッテリーを1キロでも長く持たせるため、足へかかる負担は大きいが「ECO」モードをひたすらキープする。節電の鬼と化す。御殿場市内の「ぐみ沢丸田交差点」を左折して県道23号に入って行く。車の量がガクッと減り、走りやすくなった。道は変わらず登り坂。御殿場の住宅地を抜けると店がなくなるので、コンビニに入る。スポーツ飲料、おにぎり、調理パン、さらにチョコレートとグミなどを買い込む。食べ物は直エネルギーになるので、多めに携帯しておく。

E-Bikeのメーターを見ると走行距離は34.9キロ。半分くらいか?バッテリー残量は73%なので、まずまずのような気がするが、標高はまだ537m。ここからさらに標高1900メートルも登らなくてはならない。果たして登れるのか? 先が見えない旅は、やっぱり面白い。【藤原かんいち】

(後編につづく)


アップルウォッチの高度計は標高537m。まだまだ先は長い
アップルウォッチの高度計は標高537m。まだまだ先は長い

★今回のルート