岳南電車はさまざまな企画を行う鉄道会社でもある。すっかり定着した「夜景電車」に加え「ナイトステイ」「機関車ガイド」etc.ファミリー向けから超マニアックなものまでさまざま。もちろん各駅の表情もさまざまで楽しく回ることができる。駅巡りをしているうちに、とても気になるグルメとの出会いも。とにもかくにも、この日は「カンパ~イ」の気分だった。(訪問は9月13日)

岳南原田の次は神谷を経て比奈へと向かう。神谷(写真1)は駅舎もない1面1線の棒状駅だが、見るとCMロケ地の案内板がある。岳南電車ではロケを行った駅に案内板が設置されている(写真2~5)。見落としがあるかもしれないが知っている作品があれば「へぇ~」となることは間違いない。

〈1〉神谷駅は駅舎のない1面1線の構造
〈1〉神谷駅は駅舎のない1面1線の構造
〈2〉神谷駅のロケ案内
〈2〉神谷駅のロケ案内
〈3〉吉原駅のロケ案内
〈3〉吉原駅のロケ案内
〈4〉岳南原田駅のロケ案内
〈4〉岳南原田駅のロケ案内
〈5〉岳南江尾駅のロケ案内
〈5〉岳南江尾駅のロケ案内

比奈は、またもやタイムスリップの駅舎。駅に掲げられた駅名標がいい(写真6、7)。かつては岳南原田と並んで貨物の重要駅で多くの引き込み線跡が残り、駅舎には鉄道模型店が入居している。須津は引き込み線や駅舎もなくなり周辺は住宅街となっているが、路線屈指の難読駅(写真8)。駅の開設時は須津村(吉原市を経て現在は富士市)にあったことから駅名が付けられた。簡単な文字だが読めないという難読駅のお手本の駅なので「難読売り」をしても良いのではないかと思ってしまった。

〈6〉比奈の駅舎
〈6〉比奈の駅舎
〈7〉比奈駅の文字がいい
〈7〉比奈駅の文字がいい
〈8〉須津は路線屈指の難読駅
〈8〉須津は路線屈指の難読駅

そして楽しみにしていた岳南富士岡(写真9)へと降り立つと待っていたのは、かつて貨物輸送で活躍していた機関車の数々(写真10、11)。今は現役を終えているが、それでも活躍の舞台は残されている。さまざまな企画で知られる岳南電車は11月にさまざまなイベントを行うが、その中のひとつが「岳鉄機関車ガイド(極)」。貨物列車を操っていた運転士がマンツーマンでガイドしてくれるという、まさに「極」な企画。こちらは個々の「鉄分」次第でハードルが高そうでもあるが、大人限定ではあるものの「ナイトステイホームin吉原」は終電後の深夜に吉原駅と留置車両で過ごすことができるもので私でも十分に参加できそうだ。

〈9〉岳南富士岡駅は車庫を有している
〈9〉岳南富士岡駅は車庫を有している
〈10〉岳南富士岡駅にはかつて活躍した機関車が留置、展示されている
〈10〉岳南富士岡駅にはかつて活躍した機関車が留置、展示されている
〈11〉機関車を利用しての企画も行われる
〈11〉機関車を利用しての企画も行われる

その他、ファミリー向けの「岳ちゃん電気おしごとプチツアー」「岳鉄再発見! なるほど探訪ツアー」など、さまざまな企画があるので、ぜひ岳南電車のホームページでチェックしてほしい。おなじみの夜景電車はすでに運行が始まっている(※)。私は3年前にハロウィーン仕様の夜景電車を利用させてもらったが、夜の工場街を行く電車からの景色はなかなかのものだった(写真12)。

〈12〉2017年10月の夜景電車に乗車
〈12〉2017年10月の夜景電車に乗車

ちなみに私的な岳南富士岡のツボはホームで探し回った末に見つけた左右駅名入りの駅名標(写真13)。思わず「ムムッ」。ホームにあるのはこれだけで、私が見た中では最小かもしれない。

〈13〉うなってしまったホームの駅名標
〈13〉うなってしまったホームの駅名標

終点の岳南江尾に到着(写真14、15)。唐突な終わり方をしている住宅街にポツンとある無人駅だが、以前は工場があり、延伸計画もあった名残だという。東海道新幹線の高架がすぐですごいスピードで新幹線が過ぎていく。岳南電車は10キロにも満たない距離の間で新幹線と2度もクロスする貴重な存在で、私は新幹線に乗ると車窓から必ず岳南江尾をチェックすることにしているが、あっという間に通り過ぎるため、見逃すこともしばしばである。

〈14〉終着駅の岳南江尾
〈14〉終着駅の岳南江尾
〈15〉線路はここで途切れていて周辺は民家が並ぶ
〈15〉線路はここで途切れていて周辺は民家が並ぶ

駅到着は10時半にもなっていなかったが、私にはやりたいことがあった。新幹線高架の向こうスーパーがあることは3年前に知っている(写真16)。その時と同じことをしよう。スーパーでビールを買って朝から駅舎でカンパイである…で、旅程は終了だったが、実は道中もうひとつ目的ができてしまったのだ。

〈16〉秋が訪れつつある駅舎でカンパイした
〈16〉秋が訪れつつある駅舎でカンパイした

吉原本町のホームで電車待ちをしている私に、とある文字が飛び込んできた。「つけナポリタン」。なんぞや、これ? どうやらご当地グルメらしい。3年前は見落としていたようだ。実を言うと、ここからの道中、頭の中は「つけナポリタン」でいっぱいだった。予定を組み直して最後の駅が本吉原になるように変更。これで全駅利用(乗車or下車)。本吉原からは徒歩圏だ(写真17)。

〈17〉本吉原駅には岳南鉄道の本社がある
〈17〉本吉原駅には岳南鉄道の本社がある

多くのお店で提供しているようだが元祖とされる喫茶店「アドニス」さんに入る。ちょうど正午。店内はかなり混雑していたが、私の周囲は皆さん「つけナポリタン」を食べている。名前からつけ麺のスパゲティ版だということは想像できたが、トマトベースのスープには鶏肉、チーズ、野菜と具がたっぷり。麺をつけるスペースを確保するため、先に具材をパクパク。チーズをからめてスパゲティをごちそうさまでした(写真18)。大いに満足。また将来、岳南電車に乗りに来なければならないようだ。【高木茂久】

〈18〉絶品だった「つけナポリタン」
〈18〉絶品だった「つけナポリタン」

※イベントの開催日や料金は岳南電車のホームページでチェック、申し込みを。日時によってはすでに受付を終了しているものもあるので十分確認してください。