振り返るにはまだ早いけど、今年は雨の多い1年だった。静岡・興津川で9月22日、アユの友釣り大会が実施され、金沢辰巳さん(54=大月市)が断トツの18匹を釣り上げて通算3回目の優勝を飾った。攻める場所に迷って、最後は得意の釣りに徹してつかんだ栄冠だった。

2016年、そして翌17年と金沢さんは興津川のチャンピオンになっている。周囲からは「勝って当たり前」と思われている。ただ、起伏がない興津川と、急流が連続する地元山梨・桂川とでは、その渓相は異なる。決して得意な川ではないが、その日の釣れるポイントを見つけて、自我を抑えてサオを出していた。

しかし、この日はやや違った。仕事の都合もあって、事前に興津川の様子は探れなかった。仲間からの情報では「瀬には魚がいない。際やトロ場じゃないとアユが追ってこない」との声が圧倒的だった。午前中の予選では、下流域で41人中38番目の入川だった。

金沢さん クジ運ないなぁ~、って(笑い)。もう残っているトロ場もないし、移動もできないから、本部からすぐ近くの空いている場所に入って、いろいろとポイントも変えて、拾い釣りをして、なんとか11匹で突破できた。

そして、決勝。いろいろ考えてもピンとくる手段がなく、ぐちゃぐちゃ考えるのをやめた。

金沢さん もう破れかぶれ。こうなったら、自分の1番得意な釣りをしよう、と思った。それで釣れなかったら仕方ないし。で、流れの速い瀬に入った。面白いように入れ掛かりだった。こんなに楽しいのも珍しい。途中から競技であることを忘れそうになった。

金沢さんは、オトリ2匹を含めて18匹。ぶっち切りの優勝だった。

14匹を釣って2着だった兵藤雅人さん(51=掛川市)は、2年連続の準優勝だった。

兵藤さん 大会だと2位とか3位が多いんですよ。優勝できないのは、何かが足りないんですかね(笑い)。

1週間前に試釣をして、何も釣れなかった。ただ、その釣れなかったことで、消去法から対策もはっきりしてきた。いつも、4本イカリバリを使っていたが、何年かぶりに3本イカリに変えた。

兵藤さん これがよかった。でも、予選なしでシードはペースがなかなかつかめない。来年もシード、もう1つ上を目指して頑張ります。

3位の吉野正志さん(47=八王子市)は、昨年の決勝は、17匹を釣って3位と同匹だったが、総重量でわずかに4グラム差で表彰台を逃し、4位に甘んじていた。

吉野さん 予選は下流。なんと開始から20分釣れなくて焦りました。瀬がよくないということでしたけど、オトリを変えて石の配置が良い瀬を攻めたら、見違えるように掛かった。自分を信じるしかない。今年は3位に入れて良かった。

台風19号で興津川も水位が上昇したが、今はもう平水に戻った。まだ、秋終盤の釣りもできる。これから瀬を攻めて、面白い釣り、できますよ。【寺沢卓】

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