静岡・興津川で日刊スポーツ共栄会あこがれ亭(柿澤健太郎店主=50)の興津川「あこがれ亭」アユ釣り大会(日刊スポーツ新聞社主催)が24日に開催され、決勝をオトリ2匹含む計7匹374グラムで、「チームあこがれ」の木下敦さん(68)が優勝を飾った。

予選の入川順は、くじ引きの結果51人中43位。順番が遅いことから「最上部か最下部に行くしかなかった」というが、最上流部となる矢崎橋の下を選択。そこは「決していいとは言えない状況。群れアユ狙いだったけど魚影が薄かった」。

予選はオトリを含む匹数で争われ、上位から11人タイの順位までが決勝に駒を進める。木下さんの言葉通り厳しい状況となり、トップで8匹。木下さんは3匹を掛けた5匹で、ギリギリの予選通過。決勝はシード選手3人を含む18人となったが、木下さんの入川順は最後だった。

決勝2時間の釣行から汗だくで戻った木下さん。検量場での第一声は「疲れたよ。もうフラフラだ…」と息も絶え絶え。それもそのはず。決勝の舞台として選んだのは、最下流部となる宮淵だった。だが、引き舟の水を切り、網にアユを出すと、そこには7匹が姿を見せた。検量を見守る参加者たちから「お~っ」という感嘆の声が上がった。

優勝が決まっても泰然自若だったが、実は同大会の優勝は2度目。前回は「まだ(福島県の)伊南川で開催していたころだから、もう何年も前過ぎて忘れた」と苦笑しながらも、「チームでもなかなか勝てていなかったからやっと勝ててうれしいけど、さすがに疲れた」。喜びで疲れは吹き飛ばなかった。

「チームあこがれ」のメンバーは同大会の下見釣行を禁止している。その理由は「僕らの名を冠した大会なので、遠方から来てくれる方々に釣って欲しいんです。僕らはホームなので、僕らが釣ってもダメ。おもてなしの精神で、これこそ日本の鏡だと思っています」と胸を張った。

それでも、戦う以上は優勝を目指した。「下流域に向かった人の方が予選通過者が多いという話を聞いた。入川が最後だったので掛け(賭け)に出た」。そして勝った。予選の最上流部から決勝の最下流部まで約4キロ。文字通り、足で稼いだ優勝だ。

同大会は2019年を最後にコロナの影響から開催が見送られてきた。昨年、3年ぶりの開催を予定も前日に台風15号が直撃し、周囲に甚大な被害を及ぼした。「台風15号で川相がすっかり変わってしまった」という柿澤店主の言葉通り、今年5月のアユ解禁時も、釣果としては以前の興津川のイメージからはほど遠い状況だった。むしろ、解禁できたことが自体が、ある意味奇跡とも言える状況だった。

そんな状態からアユ釣りファンの間で「興津川は釣れない」といううわさが広まっているようだ。だが、それでも51人のアユ師が集まった。釣果数字だけみると確かに寂しい。だが、これは興津川アユ釣り再生の第1歩となるはずだし、そうなって欲しいと願う。

この日の模様は、10月1日発売の本紙釣り特集面(関東版)および、ユーチューブ動画「ニッカン釣りちゃん」で近日公開予定。【川田和博】