毎年、夏に患者数が増える性感染症。特に「梅毒」は近年増加の一途をたどり、昨年は42年ぶりに全国で4000人を超えました。今年はさらにそれを上回るペースで、「昔の病気」というイメージは変わってきています。さまざまな性感染症の現状、対処法などを紹介していきます。

 梅雨が明け、夏も本番。暮らしと密接する「性感染症」は、誰もが注意すべき病である。過去最悪のペースといわれる「梅毒」をはじめ、淋病(りんびょう)、性器クラミジア、そしてエイズまで、この数年間で大きく変わったもの、あるいは、そうではないが要注意なものと、病気を正しく知り、安心できる毎日を送ろう。

 今年5月、東京の西新宿に、性感染症の治療を専門とする「プライベートケアクリニック東京」がオープンした。クリニック名誉院長の尾上泰彦医師はこう話す。「この時期になると、例年増えてくるのが性感染症です。多くの人が気持ちも身体も開放的になるからでしょう」。

 尾上医師は、早くから性感染症に取り組んできたこの分野のエキスパート。豊かな臨床経験と診断技術で、医師の間からの信頼も厚い。患者の負担をより軽く-。そんな尾上医師が今、最も懸念している病気が「梅毒」である。

 尾上医師がこう警告する。「この数年の大きな変化は、何と言っても梅毒の急増です。梅毒は昔の病気だと思われていますが、そうではない。梅毒は今、再興感染症として注目すべきでしょう」。

 昨年1年間、全国の患者数は4518人に上った。患者数が4000人を超えたのは、1974年以来と実に42年ぶり。97年には500人以下にまで減少した病気が、再び脅威になろうとしている。急増ぶりが明らかになったのは2011年だが、その後も一貫して右肩上がりという状況が続く。直近をみても、1671人(14年)→2660人(15年)→4518人(16年)というのが実態だ。

 医療現場では、梅毒を見たことがないという医師や、忙しさに追われ、正確な数が報告されていないといった指摘がある。

 「こうした数字は氷山の一角です」と心配する尾上医師。実は、昨年をさらに上回る勢いが今年、続いている。国立感染症研究所の速報データでは、昨年の同時期2202人(28週)から678人増え、今年は2880人(同)に。いよいよ“危険水域”に近づいたか!?