<胸部大動脈瘤(2)>

 突然死に結びつく疾患のひとつが、この胸部大動脈瘤(りゅう)。胸部大動脈に瘤ができ、その瘤はまったく無症状のまま大きくなり、ある日、突然に破裂すると状況は一変してしまいます。胸腔(きょうくう)内で破裂するので胸や背中に激痛が生じ、血圧が低下してショック状態に-。破裂した場所によっては血を吐いたりすることもあります。胸腔内は肺があるだけでほとんど空洞なので、一気に出血し、救命が困難なのが現状です。

 突然死に結びついてしまう胸部大動脈瘤ですが、瘤のできる場所によってはサインを出すこともあります。その“幸せサイン”のある人は約30%といわれています。気管支を圧迫するところに瘤ができると、「喘鳴(ぜんめい=ひゅうひゅうという呼吸音)」や「せき」を起こします。また、肺炎を何度も繰り返すことも-。食道を圧迫すると「物がのみ込みにくい」、反回神経を圧迫すると「声がかすれる」「しわがれ声」になります。

 このサインに気付いて受診して助かった人もまれにはいます。が、多くは人間ドックなどをたまたま受けて、発見されるケースなどです。やはり、ここは“運を天に任すことはしない”で、発症する人が増える50歳を超えたら、大動脈の検査をしっかり受けるべきです。

 この時に必要な検査は胸・腹部CT検査で、最も信頼できます。それで瘤が5センチ以上あると手術適応となり、それ以下であれば、半年に1回の検査を行っての経過観察となります。(取材・構成=医学ジャーナリスト松井宏夫)