【名古屋場所こぼれ話 初日~中日】獅司は入門時、ポケトークで意思疎通していた

名古屋場所は、関脇安青錦の3度目の優勝で幕を閉じました。10勝を挙げて大関復帰を決めただけでなく、負傷を抱えながらも優勝決定ともえ戦を制して、劇的な展開で賜杯を抱きました。

「こぼれ話」では、本場所中の記事に書ききれなかった話題、書くほどではなかったちょっとした話題などをお送りします。

まずは初日から中日までの「前編」です。

大相撲

協会あいさつする八角信芳理事長(2026年7月12日撮影)

協会あいさつする八角信芳理事長(2026年7月12日撮影)

正直な藤凌駕

初日

宿泊先のアパホテルを出て、路線バスで会場入りした。バス停を降りてIGアリーナへ向かったのだが、なんとなく歩きにくい。革靴をよく見ると、左のヒールの部分が取れてなくなっていた。いつからだろう。靴をスーツケースに入れて運んだため、ぶつかって取れたのだろうか。そんなに古い靴ではないのだが…。今夜、ホテルに戻って確認しなくてはいけない。幸先悪いが、会場にはメディアで一番乗りだった。

歩いて会場入りする際、地下鉄に乗ってきただろう呼び出しの大吉さんと一緒になった。土俵築の監督を務める大吉さんに、土俵の高さを確認した。去年より少し低い1尺8寸。ちなみに、地下収納でトラブルがあったため少し低くした国技館の土俵は、無事に収納できたそうだ。

初日は確認することが多い。IGアリーナが会場になってまだ2年目のため、レイアウトの変更がある。記者室は、昨年は1階のサブアリーナの一角だったが、今年から4階のコンコースになった。使えるエレベーターは実質1機なので、支度部屋などがある1階まで行き来するのに時間がかかる。逆算して動かないと慌てることになりそうだ。

1階のエレベーターホールは去年、呼び出しの隆二さんが呼び上げの練習に使っていた場所だ。今場所は記者の出入りが多くなるが、どうするのだろう。

土俵近辺を見渡すと、去年はなかったと思われる広告が目についた。

IGアリーナの広告(2026年7月13撮影)

IGアリーナの広告(2026年7月13撮影)

取材を進めると、あの「なとり」や「紀文」の相撲字は、行司さんが書いたものであることが判明。行司部屋近辺で聞いていくと、木村秀朗さんの書であることが分かった。早速、割場で秀朗さんを取材。話し終えると、別の行司さんから声をかけられた。「実は悟志がですね…」とニュースの種を教えてくれた。本人がアピールするのは恥ずかしいということで、この行司さんが代わりに耳打ちしてくれた。

木村悟志(2026年7月13日撮影)

木村悟志(2026年7月13日撮影)

サブアリーナの親方売店は、相変わらずのすごい行列ができている。昨年、担当の親方からはレジの機能が悪いと聞いていたが、今年1月からレジの機能は改善されたという。「1・9倍は回転率がアップしました」と教えてくれた。決して疑っているわけではないが、「2倍」と言わないことで、真実味が増して聞こえる。

千秋楽の取組表。名古屋場所は右側に広告が入る

千秋楽の取組表。名古屋場所は右側に広告が入る

取組表も東京場所と地方場所では、体裁が違う。初日は懸賞本数が多く、文字がぎっしり。名古屋場所の場合、取組の右側に広告があるため、より文字が小さくなってしまう。名古屋場所にも出張している島印刷所に確認すると、過去最少の夏場所11日目と同じで「縮小率は限界値。懸賞は65%、本割は80%」。すでに申し込まれている懸賞本数は初日は298本だが、千秋楽は315本になる見込み。さらに縮小される可能性があるため、14日目の午後にまた確認に来ることにした。

エレベーターホールに行くと、大将さんが呼び上げの練習をしていた。人が通らないタイミングを見計らって声を出しているそうだ。

今場所から十両に陥落してしまった玉鷲関は、取組後の取材を受けている時に記者に声をかけることがたまにある。「いい靴ですね」とか、身だしなみに関することが多い。この日は、マッチョなデイリースポーツの北村孝紀記者を見つけると、だまっていられなかったようだ。

中日ドラゴンズ球団90周年記念として開催期間中、毎日幕内9番目の取り組みに懸けられる懸賞(撮影・森本幸一)

中日ドラゴンズ球団90周年記念として開催期間中、毎日幕内9番目の取り組みに懸けられる懸賞(撮影・森本幸一)

今場所は、中日ドラゴンズが球団創設90周年を記念して、幕内9番目の取組に毎日懸賞をかける。初日は、地元愛知県出身の藤凌駕関が獲得した。当然、取組後は懸賞についての質問が出る。懸賞をかけてもらったことには丁寧に感謝しつつも、中日の試合は見たことがなく、野球のルールもまったく分からないという。なんとなく話を合わせそうな場面でも、正々堂々と正直に話す。またまた好感を持った。

ホテルに戻って、靴のヒールを探したが見つからない。ひょっとしてバス停までのどこかで取れてしまったのかもしれない。明日の朝、同じルートを歩いて探すことにした。

なぜ北勝なのか

2日目

革靴のかかとを探すため、前日の同じルートでバス停に向かった。あきらめかけたところで、ヒールを発見。後日、修理してもらおう。

雷部屋のXを見て、雷修さんのタンクトップ日焼けが気になっていた。本人に取材し、事情を聴いた。実家は「魚辰」という魚屋で、父と船釣りに出かけた時に日焼け。それが5月の夏場所後の場所休みだったということが驚き。1カ月以上たっているのに、まだくっきり日焼け跡が残っているという。

平戸海関の付け人を務めている黒姫山さんが、王鵬関の浴衣を着ていた。あのホラー柄。直接、反物をもらったという。境川親方(元小結両国)はびっくりしてませんでした? 「干してあるのを見て、びっくりしてました。『これ、誰のだ?』と言うので、王鵬関のだと」。魁清城さんも着ているそうだ。

竜翔さんが今場所からマゲを結って出場している。支度部屋では、ほかの部屋の関取から激しめのコンパチを食らい、ご祝儀を受け取っていた。

10日目の夜に「夜の大相撲」と題した生配信を行うため、フォームで質問を募集した。「大森さんは、なぜびん付け油をつけないのか」という質問が、3件も来た。それだけ注目されている。この質問に答えるための取材を進めた。新弟子がいつから油を塗るのか。これは部屋によって見解がさまざまだった。

ケガから復帰した安青錦関は連勝スタート。支度部屋では、とてもおだやかな表情でいる。気持ちが安定しているという印象を受けた。帰路に着る浴衣は、黄色を基調とした元横綱3代目若乃花のものだった。どうやって手に入れたのかを聞くと、ある関係者から譲ってもらったとのこと。あこがれている若乃花の浴衣はこれで3着目。「マニアですね」と声をかけると「ちょっとだけ」と言って笑っていた。

2日目の打ち出し後に、3日目から始まる前相撲の割が出た。新弟子のしこ名は、ここで初めて分かる。八角部屋のフセルバートルさんは「北勝」だった。北勝○○でなく「北勝」だけ。斬新に思えた。ほかの部屋で言えば、「琴」「栃」「朝」だけのようなケース。もちろん、追手風部屋には大翔さんがいるが…。どういう理由での命名なのか取材することに決めた。

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スポーツ

佐々木一郎Ichiro Sasaki

Chiba

1996年入社。特別編集委員室所属。これまでオリンピック、サッカー、大相撲などの取材を担当してきました。X(旧ツイッター)のアカウント@ichiro_SUMOで大相撲情報を発信中。著書に「稽古場物語」「関取になれなかった男たち」(いずれもベースボール・マガジン社)があります。