医師で作家の鎌田實さん(69)による新連載「人生100年時代をどう生きるか」をスタートします。現役医師ならではの視点や最新データを交え、おなじみの“鎌田節”で長生き時代の健康を考えます。

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 「がんの家系だから自分もがんになるのではないか」と心配という声を時々聞きます。

 確かに乳がん、前立腺がん、大腸がん等の患者さんの一部には、遺伝が関係しているものもあります。

 がんだけではありません。アメリカのデイビッド・B・エイガス医師は、著書「病気にならない生き方」(日経BP社)で、双子の研究などから、遺伝と病気について述べています。

★僕の血筋は糖尿病家系

 2型糖尿病は、遺伝的要因が64%といわれています。ぼくの実の父は、糖尿病から透析を受け、脳卒中で亡くなったと聞きました。だからぼくは糖尿病になる可能性が高い。でも遺伝子検査などはしない。そういうのは嫌い。そもそも日本人は糖尿病になりやすい。だから糖尿病でない人も、糖尿病の注意は必要。

★ストレス・喫煙に注意

 例えば糖尿病の遺伝子やがんの遺伝子があっても、必ず糖尿病やがんになるわけではありません。遺伝子はメチル化されていれば、働き出さないといわれています。メチル化を邪魔するのが、ストレス、喫煙、運動不足、老化。これらがあると、糖尿病やがんの遺伝子が働き出すのです。

★慢性炎症が寿命を縮める

 メチル化を弱めるのにもう1つ、慢性炎症があります。糖尿病では血糖値が上がるため、慢性炎症が起こりやすくなります。がんの発生にも認知症にも慢性炎症が関係しているといわれていますので、僕はがんにも認知症にもなりやすい。

★遺伝子に負けない生き方

 「人生100年時代」と政府が言い始めました。

 長野県は長寿県になった。その健康づくりを応用して、病気になりやすいはずの鎌田が遺伝や宿命に負けないために運動や食事の注意を始めました。何をすればいいか連載で考えていきます。

 ◆鎌田實(かまた・みのる)1948年(昭23)6月28日生まれ、東京都出身。東京医科歯科大医学部卒。長野・諏訪中央病院院長で「健康づくり運動」を実践。脳卒中死亡率の高かった長野県の長寿日本一に貢献した。04年からイラク支援を始め、小児病院へ薬を届けたり北部の難民キャンプ診察も続ける。「がんばらない」「だまされない」など著書多数。