人知れず悩む心の病、うつ病。一般的には、仕事や家事を休むことが良薬と思われている。「なんば・ながたメンタルクリニック」(大阪市中央区)の永田利彦院長はこう話す。

「うつ病だから休職せよ、といわれて会社に行かなくなったら、とても楽になる。休めばすぐ良くなるわけです。そうかといって、そのまま復職したらまた悪くなります。まったく治っていないからです。症状が良くなったと思って受診をやめたりすると、あっという間に再発するというのが一番分かりやすいパターンです。うつ病に隠れている『生きづらさ』にはたくさんのパターンがあり、非常に難しいのです」

こうした現状は、「うつ病は薬を飲めばいい」という風潮が生んだ結果ともいえる。永田院長は指摘する。「多くの人は、うつ病は簡単に治ると思っている。うつ病は入り口であって、その後ろにある生きづらさを見つけないといけません」。

今、世間の労働環境は厳しさを増しネットに代表される情報社会にさらされて以前にはなかった複雑な人間関係をもたらしている。

「例えば、ネットで炎上したりする。他人にどう思われるか、場を読む能力がさらに求められています。目立てば目立つほど、たたかれますし。企業は少しぐらい業績が上がっても、賃金には変わりない。そんなわけで、生きづらさを抱えて生きてきたことを褒めなければいけない。さらに生き方を修正していくことが、うつ病の治療には大切です」(永田院長)

永田院長のもとを訪れる患者は、小中学生から働き盛りまで多様化している。生きづらさを自覚していない人も少なくない。治療には、臨床心理士らと協働して、認知行動療法などさまざまな方法で患者に合った治療を提供する。多くの患者が救われている。

「薬は、通院中に『あなたにはこれ』という具合で1種類まで減らす。だから100%効く」(永田院長)。なお、臨床心理士のカウンセリングなどは、保険外となり自費。診察料プラス数千円が目安とのことだ。