北里大学北里研究所病院糖尿病センター長の山田悟氏が、「ウィズコロナ時代」のロカボ(緩やかな糖質制限)について解説します。ロカボの語源は「Low(低い) Carbohydrate(炭水化物などの糖質)」。新型コロナウイルスとの共生で新しい生活様式が求められる中、食事に気を付けながら、毎日楽しく食べて健康になりましょうと、勧めています。

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肥満、高血圧、心疾患、糖尿病など新型コロナを重症化させるリスク因子は、メタボリックドミノに関係しています。メタボリックドミノとは、生活習慣をもとにさまざまな疾病がドミノ倒しのように起こる現象です。

生活習慣がもとになって肥満がつくられ、内臓脂肪の蓄積をきっかけに食後高血糖、高脂血症、高血圧が起こってきます。メタボリック症候群です。そこから下ると、糖尿病へ、さらにその下流には失明、人工透析、神経障害、ED(勃起不全)、起立性低血圧、足壊疽(えそ)があります。糖尿病を経なくても、メタボリック症候群の下流には動脈硬化症があり、脳卒中、心筋梗塞、狭心症、心不全などが起こってきます。さらにその先に誤嚥(ごえん)性肺炎もあります。

メタボリックドミノの概念がつくられた2003年当時は分かっていませんでしたが、今では糖尿病があると、がんが増えるのは常識になっています。糖尿病があると、脳血管性の認知症が増えるだけでなく、アルツハイマー病を増やすことも分かってきました。

日本人の死因の1位はがんで、2位が心臓病です。3位は脳卒中、肺炎、老衰が時に入れ替わりますが、老衰を除けば(あるいは含めても良いと思いますが)、日本人の死因の上位はすべてメタボリックドミノの中に入ってくる疾病です。

体の中でドミノが次々と倒れていく、この負の連鎖を根っことなる肥満の部分で止めることができるのが、ロカボ(ゆるやかな糖質制限)なのです。

◆山田悟(やまだ・さとる)1970年(昭45)、東京生まれ。慶応大医学部卒。糖尿病専門医として多くの患者と向き合う中、カロリー制限による食事療法の限界に直面し、ロカボを提唱している。「糖質制限の真実」「カロリー制限の大罪」(ともに幻冬舎新書)など著書多数。