世界的流行が始まった1年前から、肥満は新型コロナの重症化リスクであることが数多く報告されてきました。直近の4月28日に発表された英オックスフォード大学の研究では、691万人という最大規模の対象者からデータ解析を行った結果が出ています。

肥満の程度をあらわす指標としてBMI(Body Mass Index)があり、体重(キロ)÷{身長(メートル)の2乗}で求めることができますが、この研究によるとBMIが26前後の場合が最も死亡リスクが低く、BMIが高くなるにつれ死亡リスクが上がることがわかっています。

逆にBMIが低い場合も死亡リスクが高いことから、極端な痩せも良くないようです。WHO(世界保健機関)ではBMI25以上を「過体重」、30以上を「肥満」と定義づけていますが、実は日本の基準はこれよりも厳しいことをご存じでしょうか。

日本肥満学会ではBMI25以上を「肥満」、35以上を「高度肥満」としています。摂取したエネルギーの吸収効率を高める、あるいは消費エネルギーを抑える働きを持つように変異した「倹約遺伝子」なるものを持っている人の割合が欧米人に比べて高いため、日本人は太りやすく、同じBMIであっても糖尿病を発症しやすいからだそうです。

そして私たち歯科の分野でも肥満のコントロールは重要です。1998年に、九州大学が世界で初めて、肥満と歯周病が関係していることを報告しました。この調査によるとBMIが高い人ほど歯周病にかかっている割合が高いことが分かり、以後世界中で行われた研究からも、歯周病が肥満を引き起こし、肥満は歯周病を悪化させる可能性が指摘されています。

適切な口のケアで肥満をコントロールすることは、コロナ禍の今だからこそ生命を守る重要な意味があるのです。

◆照山裕子(てるやま・ゆうこ)日本大学歯学部卒。同大学大学院歯学研究科を経て東京医科歯科大学歯学部付属病院勤務。テレビやラジオでのわかりやすい解説が評判となり、雑誌のコラムや日刊スポーツでの連載を担当。文筆家としての活動も積極的に行う。現在は東京医科歯科大学非常勤講師、日本アンチエイジング歯科学会理事、複数の歯科クリニックで診療。