他の臓器のがんと同様、口腔(こうくう)がんの最大のリスク因子として「喫煙」が挙げられます。タバコの煙には約4000種類の化学物質が含まれており、この中に発がんを誘発する物質が存在することが明らかになっています。

発がん物質の活性化や解毒に関与する酵素についてはDNAレベルで個人差があり、喫煙者の口腔がん発生率は非喫煙者に比べ約7倍、死亡率は約4倍も高いという報告もあります。

喫煙の次に上がるリスク因子は「飲酒」です。アルコール自体に発がん性があるのではなく、アルコールが代謝されて生じるアセトアルデヒドの蓄積が関与しているのではないかと考えられています。アメリカでは歯科医師によって、過度の飲酒を避ける患者指導も行われています。

タバコの発がん物質がアルコールに溶けることで口腔粘膜に作用する可能性があるため、お酒を飲みながらのタバコがやめられないという方は特に注意が必要です。さらには近年、受動喫煙への曝露(ばくろ)と口腔がんリスクの関連についても調査が進んでいます。

ポルトガルの研究者らが、受動喫煙曝露群と非曝露群での口腔がんのリスクを比較検討した世界中の研究480件から得られたデータを抽出し、解析した結果が2021年4月26日に論文として掲載されました。これによると、受動喫煙によって口腔がん発症のリスクに優位な関連があったと結論づけられています。曝露期間についても調べたところ、10~15年の例で発症リスクの上昇が認められたとも述べられています。

喫煙は古くから歯周病の危険因子として知られており、簡易的禁煙介入を口腔保健指導に取り入れるべきとWHOも提言しています。禁煙することでさまざまな病的変化を防ぐ効果があります。これはやがて全身の健康にもつながります。