コロナ禍のいまこそ求められる“こころの健康に必要な栄養素”とは何か。「こころに効く精神栄養学」(女子栄養大学出版部)の著者で帝京大学医学部精神神経科学講座主任教授、国立精神・神経医療研究センター名誉所員の功刀(くぬぎ)浩氏に聞いた。

ストレス過多の時代。さらに新型コロナの影響で仕事に家庭につらい思いをしている人も増えている。そんな中“こころの健康に役立つ”と「精神栄養学」に基づいた食生活が注目されている。

帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀主任教授は日本の精神栄養学の第一人者。新たな視点での食生活を提案している。統合失調症やうつ病、双極性障害などの精神疾患に栄養学的治療で取り組む。5年前に出版された著書「こころに効く精神栄養学」は、コロナ禍の光明として静かなブームになっている。そもそも「精神栄養学」とは聞き慣れない言葉だ。功刀主任教授はこう説明する。

「精神栄養学は一般にはまだあまり知られていないと思います。なぜならばこれまでこころの病気の治療というと、抗うつ薬や抗不安薬による薬物療法、心理療法と呼ばれる精神療法が主流でしたし、現在も変わっていません。治療する医師の側が着目してきたのは患者さんの症状や性格あるいは養育体験やストレス環境などです。そこに“栄養”という視点はほとんどありません」(功刀主任教授)。精神栄養学はこれまでにない学問といえそうだ。