こころの不調に食べ物が関係する。なぜなら脳は食べものでできているのだから。そんな背景から「精神栄養学」が生まれた。

「こころに効く精神栄養学」の著者で帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀(くぬぎ)浩主任教授はこう説明する。

「ストレスが誘因となってうつ病を発症することはよく知られています。ストレスに関わる脳の視床下部は同時に食欲をコントロールする中枢でもあるのです」

たとえば患者にとって「食欲がない」、あるいは「食べ過ぎ」といったことは従来でも重要視されているが、その内容を問われることはほとんどない。

「患者さんが問診時に食欲について問われることはあるでしょう。うつ病は心の病気だから食事の問題ではなく、もっと精神的な問題だという考え方がありますが心や脳の活動は生命を維持するのと同じで食物により生じるわけで、双方が無関係だということでは決してありません」

さらに現代社会の食糧事情が複雑に絡まっている。

「現代社会にあって、栄養が不足することがあるはずがないと思われるかもしれません。なにせ食べ物が有り余っている日本では食べ残しが問題になっているほどですから。しかし飽食時代でおいしいものがたくさん食べられる一方で、従来は自然に摂取できていた栄養素が不足がちであることはあまり知られていません」

うつ病の患者が不足している栄養素がわかってきたのだ。