コロナ禍の運動不足はこころにもかかわる。精神栄養学に詳しい帝京大学医学部精神神経科学講座の功刀浩主任教授はこう指摘する。

「欧米ではうつ病や統合失調症など精神疾患の治療においても運動療法がとても重視されるようになってきました。日本では『こころの病には第一に休息』というのがまだ主流。とはいえ、休息とは単に体を休めればよいというのではなく、気持ちがのんびりできなければうつ病の治療にはならないのです」

うつ病は怠けている、やる気がないといった周囲の誤った理解が病気を悪化させる要因になることから「休むこと」の意味はある。しかし海外では「運動」するほうがいいという考えが多いという。

「うつ病の人がそうでない人に比べて運動不足(運動量の少なさ)であるといった研究は多くある。それが原因か否かは議論の余地があるところですが、身体活動が少ない人はその後うつ病になりやすいという傾向はある」

では治療に「運動」を取り入れた場合の効果はどうなのか。欧米の研究では、うつ病患者かどうかを問わず、どちらも運動がうつ症状を軽減できるという報告が多いという。

「なかには運動療法と抗うつ薬の効果はほぼ同じだったという研究まであるほどです。さらに、両者の再発率を比較すると運動療法を続けていた人の再発率は、薬物療法を続けていたよりも有意に低かったという報告もあるのですよ」