■脱皮できない蛇は滅びる

前回の続きです。「遊行期」が面白いという話を書きました。遊び行く、と言葉どおり、一番自由になって好きなことをしていい時期と考えると、人生は面白くなります。

ドイツの哲学者、ニーチェは、「脱皮できない蛇は滅びる」と言いました。日本が為替ベースの1人当たりのGDPでシンガポールに抜かれたのは2007年のこと。今はさらに1・5倍もの差がついています。購買力平均ベースの1人当たりのGDPも、18年に韓国に抜かれました。日本の政治や経済は、脱皮しそこねているようです。

■もう1人の自分がいるはず

また、ニーチェは「自我の二重化」「分身」という言葉を使いながら、1人の人間は簡単に一色では表せないことを述べています。自分でも気が付いていない「もう1人の自分」がいるはずと考えれば、人生で壁にぶつかっている時、壁を越える突破口となる視点をくれるでしょう。

ぼくは自分自身に、「脱皮できない蛇は滅びる」と呪文のように言い続けてきました。脱皮を考えたからこそ、56歳で病院長をやめて、チェルノブイリやイラクの子どもたちの支援活動をしたり、作家活動や講演活動に専念するようになりました。人生二毛作、あるいは欲張って、三毛作と考えて、今は生きています。

■世界に貢献する日本人

ニューズウィーク日本版(21年11月23日号)で「世界に貢献する日本人30人」に鎌田が選ばれました。これもやはり、脱皮を目指して生きてきた結果のように思います。