■「泣き」「笑い」は生きる力になる

死は本人だけでなく、周りの人にもたくさんのストレスを与えます。死の間際、涙や笑いは、大きな力となります。

■92歳の笑いの力

緩和ケア病棟の回診を今もしています。92歳の肺がんの患者さんが喀血(かっけつ)をしました。主治医が止血剤を出そうとすると、彼は主治医を呼んでこう言いました。

「先生、ぼくの病名知ってる?」「はい。進行した肺がんです」「そう。だから肺から出血しても不思議じゃないんだよ。止血剤はいらないよ」

この話を主治医から報告を受けて、ぼくは回診に行きました。

「病気を納得しているんですね」「はい」「後悔はないということですか」患者さんはニコニコして言いました。

「コーカイは海でするもんだ」。病室は笑いであふれました。

ぼくの回診の時は、全国の医学部の学生や研修医たちが見学に来ます。ちょうど、北京大学、京都大学、信州大学の、エリート学生たちがついていました。彼らにとっては驚きだったようです。

「死」をつつみ隠さず、こんなに直接的に話題にするのか。しかもみんなで大笑い。大学病院では見ることのできない光景だと言いました。もちろんここへ来るまでには、患者さんの受容と納得へむけた、主治医や看護師たちの丁寧な寄り添いがあったのだと思うのです。

最後まで前を向いて、自分らしく生きようとしている人は、ユーモアにあふれています。