コロナ禍で混沌(こんとん)とした時代が続き、いまだ飛び交うさまざまな情報や目まぐるしく変わる周囲のルールに右往左往している方もいらっしゃると思います。医療機関で働いているからこそ、健康で毎日を過ごせることのありがたみを心の底から実感した2年間でもありました。

口の中が不衛生であると新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが上がるというデータが集まり始めているにもかかわらず、患者さんの受け入れがままならない時期もありました。外出時の感染リスクを恐れて、定期的なクリーニングをキャンセルされる患者さんも増えました。

歯科医療従事者の立場としては、その分セルフケアに注力してもらいたいと願う一方で、飛沫(ひまつ)感染予防の観点から職場や学校での歯みがき行為が禁止されるという矛盾と向き合わなければならず、大切な口を守るためには何をすべきなのかと悩んだこともありました。

歯科には急激な痛みを伴って駆け込んでくる患者さんだけでなく、検診目的で足を運ばれる方も多くいらっしゃいます。風邪をひいて内科を受診することがあっても、持病がない限りは定期的に同じクリニックに足を運ぶことはまれでしょう。その点、歯科は患者さんと長いお付き合いになる特別な場所とも言えます。

よちよち歩きのお子さんが成人し、ファミリーで来院するなんてことも珍しくありません。わずかな口の中の変化をもとに医科の先生方へ対診をすると、ご本人が気づかなかった生活習慣病が見つかることもあります。まさに健康の番人は口なのだと思う瞬間です。

今回で4度目になるオーラルケア連載ですが、皆さんが「健やかな口」を目指すきっかけになればと考え、タイトルに「健口(けんこう)」という文字を入れました。どうぞ最後までお楽しみください。