皆さまが再生医療を最も身近に感じたのは、京大の山中教授がノーベル賞を受賞したiPS細胞でしょう。この研究はまさに画期的で、皮膚から万能細胞を作る可能性を示しました。

これまでに述べましたように受精卵・万能細胞から私たちの体は出来上がっています。1つの万能細胞から多くの分化を繰り返すことにより、人間のすべて臓器が出来上がります。山中教授はこの自然の摂理の反対つまり逆分化の可能性を実証したのです。これは再生医療の多くの問題を解決するだけでなく、治療困難であったものや、創薬研究に多大なる影響を与えます。皮膚から膵臓(すいぞう)、肝臓、腎臓などあらゆる臓器が作れるかもしれません。多くの病気治療の可能性を示しました。日本も膨大な研究資金を与え、全力でサポートをしています。

しかしながら最近、iPS細胞の話題はあまり出なくなり、国の予算も削減傾向にあります。つまり難しい治療に役立つには、これからも多大な研究開発費用が掛かったり、がん化の副作用が指摘されたり雲行きが怪しくなってきたのです。同じく今までの再生医療にも同様の問題が指摘されましたが、2014年(平26)には安倍内閣のもと、世界で初めて再生医療を促進する画期的な法案が国会を通過し、環境を整備されてきました。実は、この法律ができるまでは、いわゆる野放し状態で、悪徳医療機関が劣悪な医療体制でエピデンスに薄い詐欺まがいの再生医療がまかり通っていました。この法律によって患者が安心して再生医療を受けられるようになりました。しかし、がん化や高額な医療費の問題は解決されませんでした。

ここで登場したのがエクソソーム(幹細胞培養上清液)治療です。

◆都筑俊寛(つづく・としひろ)コレージュクリニック ザ・ペニンシュラ東京院長、フランス国立神経学研究所客員教授、医学博士、日本耳鼻咽喉科認定専門医。01年よりいびき、鼻アレルギーに対するレーザー日帰り治療に特化を始め、レーザー日帰りいびき手術の総件数は2万4000例を超える。現在はエクソソームを活用した老人性難聴の治療や難病の予防、QOL改善にも取り組んでいる。