「肝臓がんの手術は難しい」、「他の消化器がんと比べて合併症のリスクが高い」、などと心配される肝臓がん患者さんはいます。しかし、十分な経験を持っている外科医であれば、難易度の高い手術であっても、安全性と確実性をもって手術ができると思います。
今は、70代でも、80代であっても、日常生活を元気にパフォーマンスされている方々は、肝臓がんに罹患(りかん)されても手術を選択される方が多くなりました。それは、健康年齢が上がってきているからだと思います。だから、20年、30年前は70~80代は手術ができないのでは、ましてや90代は--。今は90代でも「お元気なら」手術をします。
外科手術の安全性が大きく担保されてきた、ということはありますが、患者さん側も高齢であっても健康を維持して生活されている方が多くなってきているからです。「また元気になって元の生活を楽しむぞ!」という方が増えているのです。
私の患者さんで60代のAさんのケース。肝臓の右側に15センチ程度のがんが1つありました。ただ、あとは問題がないというのではありません。右の胸腔(きょうくう)と腹腔(ふくくう)の境界にある膜状の筋肉の横隔膜にも、下大静脈にもがんは浸潤していました。
このような巨大な肝臓がんの場合、私たちは開腹手術をすることが多い。Aさんの場合、右側の肝臓を切除すると4割しか肝臓は残りません。なので、術前に残る左側の肝臓の容積を上げる治療をしたあとに、右側の肝臓を切るのです。それを患者さんに伝えました。「お任せします。先生を信頼しています」と言って任されました。この治療を行わないと、あとは抗がん剤での治療など限られた治療しかありません。手術ができると根治する可能性はあるが、その他の治療では余命が短くなります。
Aさんの手術は成功し、2週間で退院。すでに4年がたちましたが、再発はなく元気で人生を楽しまれています。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

