肝臓がんの手術は「開腹手術が中心」、という時代から、身体に優しい「腹腔(ふくくう)鏡手術」の時代、そして、今は「ロボット手術の時代」を迎えています。ロボット手術は、手術台に横になった患者さんの腹部に1センチ程度の刺し傷を5カ所に開け、そこからロボットアームや内視鏡を挿入します。それを操作する術者は手術室のコンソールボックスに入って、腹腔内を3D画像でみます。そして、器具を操作することで、患者さんの腹腔内に入ったロボットアームを動かし、切除すべき肝臓がん部分にアプローチできるのです。
私たちが肝臓の手術にロボット手術を導入したのは、今年の4月。「ロボット支援下肝切除術」は1年前に保険適応になりました。現在、私たちの病院でロボット手術を行っているのは私だけですが、それ以外に術者を1人、また1人と増やしています。
肝臓の手術をロボット手術で行っている病院は、まだまだ少ない。それは、「肝臓の手術は腹腔鏡手術の方が良い」と思っている外科医が多いからかもしれません。しかし、ここにきて全国で20施設程度に増えてきたのは、「自分の手ではできない非常に細かな作業が、ロボットアームであればできる」ことを、より多くの外科医が認識してきたからです。
たとえば、がん部分の切除における緻密な血管の処理や縫合操作などは、いとも簡単にできます。安全確実な手術としては、ロボット手術の選択は正しい判断だと思います。開腹手術であれば、腹部を30~50センチ切りますが、ロボット手術では1センチが5つにすぎません。入院から退院までは7~10日程度。これは同じく「身体に優しい手術」の腹腔鏡手術と同じです。
加えて、私たちは開腹手術、腹腔鏡手術で行ってきた「ICG(インドシアニングリーン)蛍光法」を、ロボット手術でも行っています。ICG蛍光法は肝臓を緑に染め、がんの切除部分だけが染まらない方法。それと、がん部分だけを染める方法とがあり、安心安全な肝臓がんの切除ができます。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

