肝臓がんのロボット手術は、今年4月から保険適用になりました。私たちは患者さんにとって「身体に優しい手術」と思っていますし、術者としては「操作がしやすくストレスなく手術ができる」と思っています。
では、実際に患者さんはどのように思っているのでしょう。ロボット手術を受けられた肝臓がん患者さんのケースを紹介します。
A男さんは80代。元気に仕事をされていたので、早く社会復帰したい、と希望されていました。A男さんの肝臓がんは直径3センチで、肝臓のS8(肝臓の区域の番地)にありました。肝臓は8つの区域に分けられ、手術はがんが広がりやすい門脈の血流の範囲を切除します。S8は右側に肝臓の前区域と呼ばれる区域の中の横隔膜側の領域(亜区域と呼んでいます)です。A男さんとは、どのような手術が最も適性かを十分話し合って結論を出しました。
手術はロボット手術で、私たちがずっと行ってきている「ICG(インドシアニングリーン)蛍光法」で、切除すべき領域だけをきちっと染めて、そこだけを切除することに-。ロボット手術は300分、出血量はわずか10グラムという極少量で終わりました。
A男さんは手術の翌日から歩行され、その翌日からご飯を食べられました。そして、術後10日で退院されました。その時の患者さんの言葉です。
「キズも小さく痛みもない、とは説明を受けていましたが、本当にその通りで、何よりビックリしました。そして、こんなに早く退院できるとは、うれしい!……だから、早く社会復帰できるように頑張ります」
ロボット手術のロボット機器を出しているインテュイティブサージカル合同会社は、ロボットアームを1カ所から入れるSP(シングルポート)を出し、昨年11月に保険適用、今年1月から販売。ロボット手術はSPの時代が到来するかもしれません。「より身体に優しいロボット手術時代」に期待が高まります。(取材=医学ジャーナリスト・松井宏夫)

