食事中に誤ってかんでしまうと、舌や口唇は傷つきます。しかしながら数日で治ることがほとんどで、傷痕が残ることもありません。ターンオーバーが早い組織であることが口の特徴ですし、逆に言えばなかなか治らないようであれば注意が必要というサインです。単なる炎症にとどまらず、次のステージに変化していく可能性があるからです。
粘膜の細胞が修復される段階で細胞の増殖能に異変が生じ、がん化することで口腔(こうくう)がん発症につながる経路があると考えられています。とはいえ、いきなりがんができることは稀で「前がん病変」という特殊な病態を経て悪性化します。白っぽいレース様の白板症(3~5%でがん化)、赤くただれたように見える紅板症(50%でがん化)などが代表例です。セルフケアのタイミングでよく観察し、気になればすぐに病院を受診しましょう。
寿命が長くなったことは喜ばしい事実であると同時に、がんリスクとの共存でもあります。定期検診の際、舌や口蓋など口腔粘膜のチェックを取り入れているクリニックは非常に増えています。昔と異なり、歯科で口の中の写真を撮ることが当たり前になりつつある背景には、こうした人口構造の変化もあるのです。
口内炎が頻繁にできる方の場合、傷がつきやすい場所(放置した虫歯や歯並びの凹凸、合わない入れ歯等)が口の中にないかどうかを確認し、早めに歯科医に相談して解決しておくとよいでしょう。年齢とともに、潤滑油である唾液の分泌量は低下するため、かすり傷ができやすく、かつ治りにくくなります。ビタミン欠乏や睡眠不足、ストレス過多といった要因だけでなく、エイジングが関与していることも考慮しておくと楽になります。保湿効果のあるジェルやスプレーといった商品もたくさん発売されていますので、適宜活用してください。

