「2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなる」と言われている時代です。そんな時代のがんの中で、一般的に治りにくいがんの代表と言われてきたのが「食道がん」でした。それが「手術方法の改良」「新抗がん剤の開発」「免疫療法薬の登場」で改善されてきています。その食道がんを正しく知って、早期発見に結び付けてもらいたい、と思います。

食道がんの2020年の罹患(りかん)数は、国立がん研究センターの調査では男性が2万128人、女性が4430人。5対1で女性が圧倒的に少ないのです。死亡者数は、男性が8790人、女性が2128人。そして、5年生存率は男性が40・6%、女性が45・9%と良くなってきています。ちなみに“怖いがん”と言われている膵臓(すいぞう)がんは8・9%(男性)です。膵臓がんでもそうであるように、早期に発見できると食道がんも治りますが、進行がんになって見つかると治りにくいのは他のがんと同じです。

そして、食道がん治療を受ける時のためにも、食道の構造や働きについて理解しておくことは重要です。

食道は口から入った飲食物を、食道の筋肉が上から下へと収縮を繰り返す蠕動(ぜんどう)運動によって胃へと送り込むのです。飲食物に直接触れる食道は、のどから胃までの長さは35~40センチ程度で、太さは2センチ程度ですが収縮をします。

この食道がんの手術が難しいことで知られているのは、食道が重要な臓器(肺、心臓、大動脈、横隔膜など)に囲まれていて、簡単にはすぐには見えないからです。その肺や心臓をどかす操作が加わるので、食道がんの手術は難しい。だからこそ、食道がんを内視鏡で治療が終了できる段階、早期に発見しないといけないのです。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)

◆村上雅彦(むらかみ・まさひこ) 昭和大学理事・特任教授(食道がんセンター)。1981年(昭56)昭和大学医学部卒業。医学博士。日本食道学会特別会員。96年に本邦初の完全胸腔(きょうくう)鏡下食道がん根治手術を施行。食道がんにおける胸腔鏡下手術の先駆者。シンガポール等の海外手術も多い。2020年に私立大学病院では初めての食道がんセンターを開設し、手術件数は年間100例に及ぶ。