食道がんは、早期の段階からリンパ流に乗って転移しやすい。これは前回説明しました。加えて、食道がんは「周囲の臓器にも浸潤しやすい」という問題点があります。

胃とか大腸の場合、臓器の外側は「漿膜(しょうまく)」というしっかりした膜で包まれています。一方、食道の外側は、やはり同じような「外膜(がいまく)」で包まれていますが、漿膜のようにはしっかりできていないのです。

加えて、食道は肺、心臓、血管などと密着してしているので、食道がんがそれらの臓器に浸潤すると、がん進行度はステージ4になってしまいます。たとえば、食道がんが肺に浸潤した場合、肺の一部を切除すれば大丈夫ですが、動脈とかに浸潤してしまうともう手が付けられません。動脈の場合は、動脈から食道の中に大出血が起き、吐血して即死することもあるのです。

また、食道でも上部の場合は、食道は気管の真後ろにあるので、隙間があるうんぬんではなくピタッとくっついています。だから、食道がんが外側にできるとすぐに気管に浸潤します。

その場合、物を食べたり飲んだりすると気管に入り、常にむせて肺炎のような状態で見つかることもあります。症状が出たときはもう手の施しようがない、ということが多いのです。

食道がんが外側ではなく内側に発症すると「物が飲み込みにくい」「物が詰まる」といった症状が出るので発見されやすい、と思いがちです。しかし、食道は太さ2センチ程度と細いですが拡張しやすいので対応してくれます。だから、症状があって見つかった時は、約半分の人は手術もできない状態です。

「食道がんは症状が出るのを待っていたのでは遅い!」。これを忘れないでください。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)