「食道がん」は早期発見が難しいがん。今回は、50代のB男さんのケースを紹介します。
B男さんはビジネスマンなので、毎年、会社の検診で食道・胃・十二指腸に関してはバリウム検査(正式には上部消化管造影検査)を受けていました。今年もバリウム検査を受けたところ、「食道がんの疑いがある」と指摘され、B男さんは消化器内科を受診。そこで内視鏡検査が行われ、進行した食道がんが見つかり、私のところを紹介され、受診されました。
B男さんの口から最初に出た言葉は、「私は毎年バリウム検査を受けていました。なのに、進行がんだったとは…」。B男さんの悔しさが痛いほど伝わってきました。なぜバリウム検査では早期がんで発見できなかったのか-。実は、バリウム検査では食道がんが進行した状態にならないとわからないからです。「『食道がんの早期発見はバリウム検査ではダメなんだ』ということを、B男さんがもっと早く知っていたら…」と私も悔しい思いでした。
バリウム検査とは、食道・胃・十二指腸の病変を調べるための検査です。バリウムはエックス線を透過しないので、バリウムを口から飲むとそれが流れていく様子を見ることができ、狭くなっているところや凸凹しているところがわかるのです。
ただ、食道は粘膜の表面に「粘膜上皮(扁平=へんぺい=上皮)」があります。胃などの表面は粘膜で、がんはその粘膜から発生しますが、食道がんは扁平上皮と粘膜の境から発生します。すると粘膜にしか、がんの変化が出ていないと、バリウム検査ではわかりません。何か明らかに変形するところがないと、がんの疑いになりません。
はっきり扁平上皮が変形してくるときは、食道がんはかなり進行しています。だから、バリウム検査は食道がんを早期に発見できる検査ではないのです。これを理解し、上部消化管は内視鏡検査を受けるようにしてください。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)

