「食道がん」治療に関係するすべての診療科の医師が集まって話し合い、患者さんに最も適した治療を決める「キャンサーボード」。そして、患者さんの納得が得られて、そこから食道がん治療は始まります。ごく早期の食道がんであれば、「内視鏡治療」が行われます。
その食道がんのごく早期とは-。食道の壁は表面から「粘膜上皮(扁平=へんぺい=上皮)」「粘膜」「粘膜筋板」「粘膜下層」「固有筋層」「外膜」の6層になっています。早期の食道がんは粘膜までのがんです。そこまでであればリンパ節転移は起こさないといわれています。
治療法となる内視鏡治療は「EMR(内視鏡的粘膜切除術)」と「ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)」の2つ。EMRは直径2センチまでのがんが対象で、がんの部位をポリープ状に盛り上げてワイヤで切り離します。一方、ESDはがんの周囲より5ミリ外側にマーキングをし、粘膜下層に生理食塩水を注入してがん部分を浮き上がらせます。そして、マーキングしたところを切開し、粘膜下層を専用ナイフで一括切除します。
2つの内視鏡治療を紹介しましたが、私どもではESDだけを行っています。EMRは粘膜を取るだけなので、ぎりぎりでがんを残すことがあります。その点ESDは、粘膜下層まで切除できるので、確実にがんの範囲と深さが判定できます。だから、ESDに特化したのです。
ESDは治療と検査を兼ねています。ESDを行った後は、病理できちっと判定してもらいます。がんが浅くてリンパ管や血管にがんが入っていなければ、治療は終了です。ただし、がんの深さが浅くてもすでにリンパ管にがんが入っていることが分かれば、CT検査でがん転移がなくても、「手術をすべき」と判断し、手術をすることになります。患者さんにとって、「ESDで助かった!」という形になります。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)

