「食道がん」の治療は、がんの深さが粘膜筋板、粘膜下層を超えていると「内視鏡治療」の範囲を超えているので、「手術(食道亜全摘術)」になります。食道がんの手術は、胃・大腸がんなどのようにがん部分だけを切除してつなぐことはできません。食道はすべて取り除くことになります。

それには2つの理由があります。第1は、「食道はがん部分を切除しても臓器が萎縮してしまうので、食道を寄せることができないからです」。

第2は、「リンパ節転移が胃・大腸がんではがんに近いところから転移しますが、食道がんはどこのリンパ節にでも転移します。だから、食道の周囲のリンパ節は首から腹部まで全部取る必要があるのです。そうなると、食道も一緒に取らないとリンパ節が取れないということになるのです」。リンパ節をきちっと切除するために食道をほぼ全摘(亜全摘)する手術になります。

そして、手術方法です。食道をすべて切除するとなると、首、胸、腹の3カ所すべての手術になります。それを、開胸、開腹、胸腔(きょうくう)鏡、腹腔(ふくくう)鏡、どの方法で手術を行うか-。さらに今は、ロボット手術も行われています。

開胸・開腹手術は昔ながらの手術法で、今、これを行っている施設は10%程度と非常に少なくなりました。手術時間が10時間以上はかかり、集中治療室には少なくても5日程度は滞在します。そして、絶食期間も10日前後と長い。何より、手術侵襲も術後合併症も多いので、十分に注意する必要があります。75歳以上の高齢者では、開胸・開腹手術は適応外としています。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)