前回は「食道がん」の手術を取りあげました。開胸・開腹手術は10%程度の施設でしか行われていません。

やはり、“身体に優しい”手術の時代なのです。それが「胸腔(きょうくう)鏡・腹腔(ふくくう)鏡併用手術」です。私たちは1996年11月にこの手術を開始しました。当時は、胸腔鏡・腹腔鏡併用手術を行うところがなく、患者さんは困っていました。今は標準術式です。

この手術は、胸腔鏡では胸に1センチの刺し傷が5カ所、腹腔鏡では腹部に1センチの刺し傷が3カ所につきます。加えて、食道をすべて切除したときに、腹部を5センチ開けます。それは臓器を取り出すためです。

そして、刺し傷から胸腔鏡、腹腔鏡、手術機器、鉗子(かんし=組織などを挟んで動かしたり、圧迫したりする器械)などを入れ、カメラでとらえた映像はモニターに映し出されます。術者は助手と映像を共有し、手術を進めていきます。

これに加え、私たちは5センチの開腹部を多少異なる使い方をしています。私たちは刺し傷と同じように5センチの開腹部を最初から開けておいて、そこから手を入れて鉗子として働くのです。これにより、腹部の切除は腹腔鏡だけだと2~3時間かかるところが、1時間で終えることができます。手術時間の短縮も“身体に優しい手術”になります。それがあって、胸腔鏡・腹腔鏡併用手術のトータルの手術時間は、平均で6~7時間のところ、私たちは5~6時間で終えることができています。

手術が終了して、何より痛みのないのが患者さんにとって最も喜ばれるところです。だから、患者さんは手術の翌日から動いたりでき、早期退院・社会復帰が可能となりました。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)