手術は腕の良い外科医がいれば失敗しない、というものではありません。手術を受ける患者さんの身体の具合によって、手術が成功しても術後に問題が生じ、最悪亡くなることもあります。そこで、患者さんにしっかり行ってほしいのは「術前準備」です。

術前準備の第1は、「呼吸訓練」です。食道がんの患者さんには、タバコを吸っている人がかなり多いため、たばこが原因での「COPD(慢性閉塞=へいそく=性肺疾患)」になっている人が少なくありません。COPDは喫煙によって気管支や肺胞が慢性的な炎症状態になり、肺の組織が破壊されていく疾患です。だから、まずは喫煙をやめてもらいます。禁煙をして1カ月以上たたないと気管の炎症はとれません。炎症がとれていないと術後にかなり痰(たん)が多くなったり、肺炎になりやすくなったりします。そうならないために、必ず「禁煙」。それとともに、肺活量をあげて呼吸機能をよくする呼吸訓練を指導し、実践してもらいます。加えて、飲酒も手術の1週間前までにやめてもらいます。

術前準備の第2は、「口腔(こうくう)ケア」です。口腔内のケアは術後肺炎の予防につながるからです。だから、必ず歯科医に診てもらい、必要なところはすべて治療をしてもらって手術に向かうことになります。

術前準備の第3は「不整脈・狭心症のチェック」です。狭心症の疑いが出てくると全身麻酔での手術はリスクが大きいのです。この場合は、先にカテーテルで血管の治療を行い、それから手術になります。心臓と肺に関しては、病気が疑われる点があるとすべてチェックし、あれば治療を済ませます。

食道がんは術前準備が多くあります。だから、チーム医療でその対応ができる大きな病院でないと食道がんの手術は難しいのです。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)