ここまでは「食道がん」の中核治療の手術を中心に紹介してきました。もちろん、そのほかの治療も大きく進展してきています。その1つが「術前化学療法(抗がん薬)」で、切除可能なステージ2・3の食道がんでは完全に標準治療になりました。食道がんは術前化学療法が何故よく効くのか-。
食道の壁は内側から「粘膜上皮(扁平=へんぺい=上皮)」「粘膜」「粘膜筋板」「粘膜下層」「固有筋層」「外膜」の6層。食道がんの90%は扁平上皮にできる「扁平上皮がん」で、抗がん薬が効きやすいがんです。そして、術前化学療法と術後化学療法を比べると、圧倒的に術前化学療法の予後が良い。がんの中で術前化学療法の有効性がハッキリしたのは、食道がんが最初で、胃がん、膵臓(すいぞう)がん、そのほかのがんでも術前化学療法が当たり前になってきました。
術前化学療法では、「シスプラチン」「5FUS(フルオロウラシル)」「ドセタキセル」の3種類の抗がん薬を使います。まずは、入院して毎日1週間点滴。それが済むと退院し、2週間後に2回目の入院。これを1クールとして3回行います。トータル7週間。それから3、4週間後に抗がん薬が最も効いてくるので、手術を予定します。
ただ、化学療法といえば、副作用が気になる人が多い。副作用としては「髪が抜ける」「食欲低下」「白血球低下」がありますが、出ない人もいます。様子を見ながら2クールでやめることもあります。
化学療法は扁平上皮がんには極めて有効で、転移したところも含めてがんが消えたケースもでてきます。しかし、それは手術でがん部分を切除して確認をしないとわかりません。
その確認手術でがんが完全に消えていると、私たちは患者さんに「完全に治りますよ!」と言えます。(医学ジャーナリスト・松井宏夫)

