「肥満症」の薬物治療が大きく前進しました。それは、すでに取り上げた「ウゴービ(一般名:セマグルチド、製薬会社:ノボノルディスクファーマ)」と「ゼップバウンド(一般名:チルゼパチド、製薬会社:イーライリリー)」が保険適用で登場したからです。この前進はこれで終わりではありません。さらに使いやすい薬に進化しようとしています。
それは、経口薬への移行。今は2つの薬とも注射薬ですが、アメリカではゼップバウンドの経口薬が出ていますし、ウゴービも経口薬を出します。両製薬会社とも「注射薬より経口薬の方が良いのでは」、という判断で経口薬に力を入れています。日本でも2027年頃に経口薬になる可能性はあります。
注射薬と経口薬の違いは、注射薬は週1回の投与に対して、経口薬は毎日服用します。患者さんは、週1回の注射薬では打ち忘れることもあるので、日常生活に取り入れやすい経口薬を選択される可能性が高いでしょう。これはどちらかを選択する場合です。
しかし、注射薬と経口薬が共に歩む可能性もあります。注射薬はウゴービが68週、ゼップバウンドが72週しか使えないという規定があります。そこで注射薬をやめると、患者さんの減少していた体重が必ず増えます。体重の増加を抑えるために経口薬を服用します。そして、経口薬で効果がなかった場合は、注射薬に戻します。このような薬の使い方になる可能性は高い、と思います。
注射薬と経口薬が共に歩む時代--。現時点では注射薬の効果は確実ですが、これが経口薬を使うとどうなるか。今後、その点がハッキリ分かってくると思います。(医学ジャーナリスト 松井宏夫)

