MLBの新コラム、「斎藤直樹のメジャーよもやま話」がスタートです。メジャーリーグの話題を気の向くままに、硬軟取り混ぜて提供します。記録の掘り起こしや「セイバーメトリクス」を使ったデータ分析が得意分野。ライトなネタなら、昨年ならトラウトが「ファンタジーフットボール」のメジャー選手の元締めだった、というのがお気に入り。昔のエピソードなども含め、幅広くMLBを紹介します。

5日(日本時間6日)ナショナルズ戦、バットのグリップ部分について審判と話すレッズ・デラクルス(AP)
5日(日本時間6日)ナショナルズ戦、バットのグリップ部分について審判と話すレッズ・デラクルス(AP)

長いこと草野球をやっていたこともあり、バットやグラブといった野球道具に強い興味がある。5日(日本時間6日)、レッズの新人エリー・デラクルス内野手(21)が、バットで一騒動を起こした。デラクルスは6月にデビュー15試合目でサイクル安打を達成という、メジャー史上3番目に早い記録で注目された、超有望株だ。レッズがナ・リーグ中地区首位に躍進した立役者と言われている。

5日(日本時間6日)ナショナルズ戦、バットのグリップ部分に「ブラストモーション」を付けたレッズ・デラクルス(AP)
5日(日本時間6日)ナショナルズ戦、バットのグリップ部分に「ブラストモーション」を付けたレッズ・デラクルス(AP)

ナショナルズ戦の2回、第1打席でバットのグリップに付けていたプラスチックカバーが、とがめられた。ナ軍のマルティネス監督から、審判へ確認の注文がついたのだ。審判がニューヨークにあるMLB機構の本部にルールを確認することになり、暫定的に打席ではカバーを外した。デラクルスは三振に倒れた。

カバーは「ブラストモーション」というスイング測定機のものだ。スイングスピードや角度などが測定できる。エンゼルス大谷翔平投手もキャンプなどで使用しており、DeNA関根大気外野手はシーズン中も装着しながら打撃練習している。この機械は試合で使用できないが、カバーだけなら付けていてもいい、と認められた。「付けている方が心地よい」というデラクルスは、第2打席以降で再び装着した。

3回は左飛に終わったが、5回の第3打席、2階席に届く445フィート(約136メートル)の特大の4号本塁打を放った。打った後、デラクルスはグリップにつけたカバーを指さしてから一塁に走りだした。新人らしからぬ、これ見よがしの態度に、マルティネス監督が「ふざけた態度が気にくわない」と苦言を呈する事態に発展した。デラクルスは「打席での感触が快適になるだけで、有利になるものはない」と説明した。二塁打も2本打った。

レッズのデラクルス(USA TODAY Sports=ロイタE)
レッズのデラクルス(USA TODAY Sports=ロイタE)

この騒動で思い出されるのは、1983年7月に起きた「松やに(パインタール)事件」だ。首位打者3度でロイヤルズの英雄、ジョージ・ブレットが、ヤンキース戦の9回2死から逆転2ランを放った。ところが、ヤ軍のビリー・マーチン監督がベンチから出てきて、ブレットのバットに文句をつけた。グリップから18インチ(約46センチ)を超えて、滑り止めの松やにを付けてはいけない、というルールに違反していると抗議したのだ。

マーチン監督は以前から知っており、勝負どころであえて抗議した。この抗議が認められ、ブレットはアウトとなって試合終了した。だが、後日、ロ軍の提訴で本塁打が認められ、続行試合を挙行。ロ軍が勝利した。

196センチ、90キロで遊撃、三塁、二塁を守る両打ちのデラクルスは、デビューから1カ月もたたずに4本塁打、11盗塁と大活躍し、メジャーファンの間では、将来のスター候補として話題になっている。松やに事件ならぬ「ブラストモーション事件」として、デラクルスが殿堂入りするころには、語り継がれるかもしれない。【斎藤直樹】

◆斎藤直樹(さいとう・なおき)1973年生まれ、横浜市出身。レイアウト、グラフィック担当、静岡支局、野球の記録、NPB、DeNA担当を経てMLB担当。早大3年だった95年にはドジャース野茂英雄を追いかけ、サンフランシスコからシカゴまで長距離バスで56時間かけて移動した野球マニア。メジャー全球場来訪とファンタジーキャンプ参加が夢。

(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「斎藤直樹のメジャーよもやま話」)