10代から40代まで長いこと草野球をやっていたこともあり、草野球戦術がメジャーでも通用すると思わず興奮してしまう。
先日は、2つのプレーが目に留まった。1つ目は、先週も取り上げたレッズの新星エリー・デラクルス(表記は「デラグルーズ」の方がふさわしいかもしれないが、ここでは共同通信の表記に合わせておく。選手名の表記については次回以降に言及する予定)内野手(21)のホームスチール。もう1つは、アスレチックス藤浪晋太郎投手(29)の「ど真ん中投法だ」。
デラクルスは8日、ブルワーズ戦の7回2死、1イニング3盗塁を決めた。6-5と1点リード、打者は5番フレーリーの場面。カウント1ボールからヘッドスライディングで二盗を決めた。1ボール2ストライクから、今度は三盗に成功した。左打者のフレーリーに対し、三塁手が三遊間寄りを守っており、三塁に送球さえもできなかった。
ここで1度ヘルメットを抜いて一呼吸おくと、隙を見逃さない。捕手から返球を受けたペゲロ投手が、走者から目を切って二遊間に向けて「2アウト!」とばかりに両手を上げた瞬間、本塁へ猛ダッシュ。気付いたペゲロが本塁にボールを投げ返した時には、ヘッドスライディングでホームを陥れていた。「彼(ペゲロ)がマウンドに戻るのを見た時、スローペースで三塁まで振り向かなかったので行こうと決めた」と振り返った。1打席中に3盗塁は、1969年のロッド・カルー(ツインズ)以来54年ぶりの快走だった。
このプレーは、草野球や少年野球では散見される。実力差が大きいチーム同士の対戦で、足の速い走者が、緩慢な投手や肩の弱い投手を相手にすると繰り出すものだ。「隙があったら行け」とよく言われるが、実際にメジャーリーグの公式戦で出くわすとは、夢にも思わなかった。ちなみに、デラクルスは6月にデビューしたばかりなのに、約2カ月で16盗塁(15日現在)と、あっという間にチーム1位、リーグ10位となった。
アスレチックスの藤浪は、チーム1位の5勝を挙げている。開幕当初は4試合ほど先発したが、防御率14点台で0勝と苦労した。以後はリリーフに回り、防御率も9点台(15日現在)と1桁に下げてきた。6月にいたっては、月間防御率が3点台だった。
救援に回ったころから、ランゲリアーズ捕手の構えが変わった。両サイドのコースではなく、ど真ん中に構えるようになった。草野球や少年野球では、ストライクが入らない投手に「真ん中に投げろ」と指示が送られ、捕手が構えることもある。「どうせ真ん中を狙っても、コースに散るんだから」が説得の定番だ。だが、日本のプロ野球では、まずお目にかかれない。
藤浪の場合も、おそらく球威を生かそうとしたのだろう。100マイル(約161キロ)を超えるどころか、102マイル(約164キロ)も珍しくない。直球(4シーム)の平均球速98・0マイル(157・7キロ)は、大谷翔平(エンゼルス)の96・9マイル(155・9キロ)さえも上回る。メジャー屈指の球速といえる。「ど真ん中投法」も当初は一時的なものかと思っていたが、2カ月以上たっても継続されている。
デラクルスも藤浪も、メジャーリーグの大海原で、比類なき個性を存分に発揮している。いつかメジャーに行けるかもと夢見る草野球、少年野球選手のためにも、角が丸くならないように、突き進んで欲しい。【斎藤直樹】
(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「斎藤直樹のメジャーよもやま話」)





