2020年になったことを機にアメリカのメディアでは2010年代を振り返る企画が数多く報じられている。そんな中でスポーツ専門局ESPNのデビッド・シュエンフィールド記者は2010年代における各ポジションの最高選手による「2010年代の最高チーム」を選出した記事を掲載した。

この記事で興味深いのはセイバーメトリクスで用いられる指標であるWARと、打者ならOPS+、投手ならERA+を基本に、異なった年、異なったリーグやチームでもできるだけ公平に選んでいる点だ。

WARは打撃、走塁、守備、投球を総合的に評価して選手の貢献度を表す指標で、そのポジションの代替可能選手に比べてどれだけ勝利数を上積みしたかを表す。先発クラスだと2.0以上、オールスターに選出されるレベルだと5.0以上、MVPクラスで8.0以上になる。これを10年分積算したものが使われた。

OPS+は打者を評価する指標であるOPS、出塁率と長打率を足したものをさらに改良したものだ。ホームゲームにおける打線の傾向や所属するリーグ全体の打者の傾向を加味し、100がリーグで平均的な打者となるようになっている。

ERA+は従来から使われてきた防御率にリーグ平均防御率や球場の投打の有利不利を加味した数字だ。やはり100が平均となるようになっている。

ではその結果だが、捕手ではジャイアンツのバスター・ポイジーがWAR42.2、OPS+128で選ばれた。

1塁手がレッズのジョーイ・ボットで152 OPS+、52.1 WAR、2塁手がメッツのロビンソン・カノで132 OPS+、54.2 WAR、遊撃手がインディアンズのフランシスコ・リンドーアで119 OPS+、28.6 WAR、3塁手が2018年に引退した元レンジャーズのエイドリアン・ベルトレで130 OPS+、51.0 WARだった。いずれもスター選手だが、遊撃手の数字がいずれも低いのは守備が重視され、突出した活躍になりにくいポジションということだろう。

外野手ではエンゼルスのマイク・トラウトが176 OPS+、72.5 WARで、ムーキー・ベッツで134 OPS+、42.0 WAR、フィリーズのアンドリュー・マカッチェンが135 OPS+、41.2 WARで選出された。やはりトラウトは圧倒的な数字になっており、いかにすごい選手であるかがわかる。

DHはタイガースのミゲル・カブレラが153 OPS+、43.5 WARとなった。元レッドソックスのデビッド・オルティーズなども候補になったようだが、2度のMVPや2012年に三冠王に輝いたことも考慮されたようだ。

先発投手はドジャースのクレイトン・カーショーが164 ERA+、59.3 WAR、アストロズのジャスティン・バーランダーが136 ERA+、56.2 WAR、ナショナルズのマックス・シャーザーが134 ERA+、56.1 WAR、ダイヤモンドバックスのマディソン・バンガーナーが120 ERA+、32.2 WAR、レッドソックスのクリス・セールが140 ERA+、45.4 WARの5人が選ばれた。特に最初の3人は抜きんでた印象だ。

救援投手はカブスのクレイグ・キンブレルが195 ERA+、19.6 WARで、さらに最も多い346セーブを挙げたことが選考理由になっている。

印象の残り具合でなく、こうした指標による選考もおもしろいものである。2020年代はどんな選手が活躍していくだろうか。