いきなり歴史的な1発を放った。エンゼルス大谷翔平投手(23)が、インディアンス戦に「8番指名打者(DH)」で出場し、本拠地初打席でメジャー1号を放った。勝ち越した直後の1回2死二、三塁から右中間スタンドへ3ランをたたき込んだ。1日(同2日)に投手としてメジャー初勝利を挙げ、その2日以内に打者で本塁打を放ったのは、1921年のベーブ・ルース(ヤンキース)以来という。米国ファンも驚かせる快挙を、愛らしい笑顔の残る青年が、やってのけた。
歴史的な打席は、2-2同点の1回2死満塁で訪れた。4球目カーブが暴投となり、1点追加して2死二、三塁。大谷は、カウント2-2から内角低めに落ちるカーブを、ノーステップですくい上げた。スタンドに届くか、観客も本人も半信半疑。全速力で駆け抜けた大谷は「フェンスに当たるかなと思って走っていたので。風に押されて入ってくれて、すごい気持ちよかった」と1号3ランを振り返った。
意気揚々。跳ねるように三塁側ベンチへ戻ると、スタンドの歓声とは裏腹に、静寂が待ち受けた。チームメートは誰もハイタッチして来ない。チームメートは全員、大谷に背を向けグラウンドを見ていた。これがメジャー流のユーモアに満ちた「サイレント・トリートメント(無視)」と呼ばれる儀式だった。
「あれ?」。両手を広げてハイタッチを求めても、全員にスルーされた。背後からキンズラーの肩を揺らして気付かせると、ようやく“いたずらタイム”は終了。打って変わって次から次へ覆いかぶさるように手荒い祝福を受けた。「(儀式だとは)あまり分からなかった。でも、こういうやつなのかなと思って、うれしかった」。メジャー流の祝福は、驚きと喜びがつまっていた。
愛されているがゆえの、サプライズ演出だった。トラウトやプホルスら一流選手同士がアイコンタクトし、仕掛けた“ドッキリ”だった。オープン戦ではメジャー投手への適応に苦戦し、結果が出なかった。それでも「ゲームやったり、チームメートを楽しませているし、いつもポジティブ」と、主砲のトラウトが言うように、大谷は常に笑顔だった。近しい関係者にも一切、暗い顔を見せなかったという。それでいて「一生懸命やっている」と多くの選手が語る。たとえ失敗しても明るく、前を向く。そんな姿があったからこそ、愛される存在になった。
この日はメジャー初本塁打だけでなく、初のマルチどころか3安打をマーク。初勝利を挙げてから2日以内の本塁打はベーブ・ルース以来。「すごい光栄なことですし、今日よりこの先の方が大事になる。1日1日、まず明日、がんばりたい」と「野球の神様」への意識も隠さない。目指すは同一シーズンで2ケタ勝利(13勝)2ケタ本塁打(11本塁打)を記録した1918年のルース以来の快挙。右中間に伸びていった1号の放物線が、二刀流に懐疑的だった全米のファンの持論を大きく変えるはずだ。【本間翼、斎藤庸裕】



