【ピオリア(米アリゾナ州)16日(日本時間17日)=四竈衛】マリナーズのイチロー外野手(45)が、新打撃フォームでメジャー19年目のスタートを切った。招待選手として参加しているキャンプ初日を「大きな記念日」と表現。昨年5月以来、実戦から離れているものの、前代未聞の「フロントからのメジャー復帰」へ挑む覚悟を明かした。

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幾多の偉業を成し遂げてきたイチローが、再び「選手」としてグラウンドへ戻ってきた。日米報道陣約70人が見つめる中、45歳の招待選手は常に先頭に立って練習メニューを消化した。若返りとチーム再建を進めるマ軍の現状をよそに、キャンプ初日の主役は、間違いなくイチローだった。「イチロー選手って呼ばれるのが気持ちいいわね」とかみしめた。

目指すのは、メジャーのグラウンド。その決意の表れが、新打撃フォームだった。いつものようにバットを掲げる動きは同じ。だが、両膝を曲げ、バットのヘッドがやや投手方向へ向く構えに変わった。始動するとさらに重心が低くなり、素早く体をターンさせてバットを振り抜く。25スイングで柵越えは5本。スイングスピード、打球速度とも、昨季終了時点よりアップしたことは明白だった。

練習後のイチローは、改造の狙いについて「そんなこと言わなくてもいいんじゃないの」とサラリとかわした。ただ、現状については淡々と言った。「軽めです。ずっと寒いところ(神戸)でやっていたので、急に調子こいてやると、それは怖い。時差ボケが取れるまでは慣らしていく感じかなと思っています」。これまでもマイナーチェンジは繰り返してきたが、今回はほぼ「大改造」。日米通算4367安打の実績を残しながら、変化を恐れない姿勢こそ、今季へ懸ける思いだ。

昨年5月3日。選手登録枠から外れ「会長付特別補佐」となった。それでも、練習を継続した。周囲から限界説を含め否定的な声が耳に届く中、黙々とルーティンを続けた。フロントからメジャーへ復帰した前例はない。「比較の対象がないので、そんなに怖さはない。ただ楽しいだけでもない。ただ、いつも期待を裏切りたいと言う気持ちはあります。安易な、責任のない意見というのかな、そういうものを裏切りたいとは思っています」。挑戦に迷いはない。

元来、逆風は嫌いではない。今回も、結果を残すため打撃フォームを変え、再びスタートラインに立った。「大きな記念日」と表現した日米通算28年目のキャンプイン。45歳の挑戦が、幕を開けた。