能力の高い日本人3投手について、メッツなどで活躍した五十嵐亮太さん(47)が分析した。ドジャース大谷翔平(32)佐々木朗希(24)アストロズ今井達也(28)の活躍の鍵を探った。【聞き手・斎藤直樹】

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今井は5勝4敗、防御率6・06だった前半戦、日本とメジャーの細かい違いに戸惑った。「上がり」(日本では先発した投手が登板翌日、登録抹消せずにベンチ入りを外れる)がないこと、得意の球で打者を攻めるより打者の苦手な球種やコースで攻めること、遠征先ではホテルではなく球場で食事を取ることなど。

五十嵐さん 今までの野球とリズムとか、食事も含め、違いは結構ある。例えばキャンプならホテルから球場まで行ったのが、自分で家を借りる。ある程度受け入れる「対応する能力」は大事。例えば僕は、コーチが見てないところでボールを投げないでくれとか、キャッチボールすら許されなかった。キャンプ中も練習後、足りないので軽く壁に向かってボール投げたりとかも、コーチに「やります」と伝えてからやらなければいけなかった。コーチからしても、知らないところで何かがあってからじゃ遅いので、立場を考えるとそれも仕方ない。調整の仕方も違う。キャンプなら球数ではなく時間内に投げる。日本なら、自分で考えながら投げて時間を費やすのに。

自らの経験を元に、米国文化への順応を呼びかけた。

五十嵐さん 文化の違いをどう感じるか。日本では若い頃、監督、コーチの言うことに対して「はい」だった。アメリカだと自分からの発信、どういった考えかを伝えるのも大事。今井投手もチームに「僕はこれ分かるけど、こんなスタイルはちょっと難しい」と言ったら、コーチも「じゃあこうしていこう」とか新しい案が出ると思う。日本とメジャーは、コーチと選手の関係が違う。言いたいこと言っていいし、大丈夫なんです。日本だったら「●●コーチ」と言うけど、向こうは名前で言う。「ワーセンコーチ」と言ったら「お前は五十嵐選手なのか」と。「違うだろ。人と人だろ」と言われた。大谷選手は監督とふざけ合ってるじゃないですか。あんなの日本じゃ難しいと思いますよね。監督によって違うけど、コミュニケーションの取り方が違うから、そこら辺の慣れも大事。慣れてくると変わると思う。

大谷は今季、フォームを大きく変えた。重心が低く、左肩を上げ、右側に体重を乗せてから投げている。

五十嵐さん 今まで大谷の投球フォームを見て、いい意味で癖とか特徴が感じられなかった。野茂さんならリリースポイントの高さとかひねり方とか、ダルビッシュだったら左腕の使い方とかの個性。能力の高い野手が投手をやってる感覚が強かった。

でも、今年は個性が出てきた。ものまねしやすくなった。意識してるなという部分は、右足の乗せ方、左のグローブからあごの(打者を)見る形とか。リリースまでのプロセスをどうするのが自分の中でベストなのかを考えた結果だと思う。一番は下半身の使い方。上半身の負担を少なくしたいという意識が強いのかなと思う。

同じスタイルで投げてたら、同じようなけが(内側側副靭帯=じんたい=の断裂)をするリスクが高い。肩ひじの負担を減らしながら出力を上げるにはどうするべきか。プラス、コントロール、タイミングの取り方も含め、自分に合ったものを見つけたと思う。フォームの微調整は今後も続いていく。ある程度、自分の投球スタイルが、明確になったと思う。

佐々木は今季、4勝5敗、防御率4・71。昨年は1勝1敗、防御率4・46なので、この数字だけ見れば、あまり成長していないように感じられる。だが、奪三振率は6・94から9・03に上がり、与四球率は5・45から3・46に大幅良化。ストライク率も59%から64%に上がった。突き抜けるための鍵はどこにあるのか。

五十嵐さん 課題は克服してきている。ストライク率の低さ、フォークで空振りが取れない、コントロールできていない。投げるたびに課題を見つけ、修正を繰り返してきた。ストライク率が高くなったことはすごく良い。ゾーンで勝負できるのはすごく大事。ストライク率をキープしつつ、そこから先。技術的なところになってくる。

「ここは抑えよう」と思って力を入れた時に、抜けるボールと引っかけるボールの割合が多い。それを少なくすることが大事。そのため何が足りないのか。メンタルなのか技術的なことなのかの判断を自分でやらないといけない。

球種が少なくても、抑えられる力はある。だからそれを安定的に出すことが大事。スライダーでも良いボールはある。だからストレート、フォークとスライダー。この3つでいけるけど、安定的に投げ込む能力は高くない。スライダーも他の2つに匹敵するぐらいに伸ばせる可能性がある。増やしていく方がいい。

去年、短いイニングのワールドシリーズで真っすぐとフォークだけで抑えていた。これをしっかり投げ込めば抑えられるという自信と感覚はあったはず。それに何を加えることで、先発でも抑えられるか。出力をどの程度出すか、抑えなきゃいけないかを、メジャーで活躍するための「答え探し」をしていたと思う。答えはなんとなく見つかっているから、その中での安定感を出すためにはどうするか。光が見えているはず。

まずはフォームを安定させる。リリースなのか、そこまでなのか。それが良くなってきたら、そこからプラスアルファで足していくものも、彼には見えているはず。日本にいる時は、ある程度自分のパフォーマンスさえ発揮できれば抑えられていた。アメリカでは、より自分に合ったものを見つけなきゃいけない。ここを越えると、前よりも良い佐々木投手が見えるはず。

徐々に安定感を増している佐々木に、潜在能力を認めるからこそ、ブレークスルーを期待した。