日本ハム吉田輝星投手の弟・大輝(たいき)君(中学3年)が、東京・大田スタジアムで気迫の投球を披露した。11月13日、中学硬式野球ポニーリーグの東日本コルト選手権、準決勝のことである。

コルト選手権は3年生最後の公式戦、大輝君は東北連盟の代表、秋田中央ポニーの主将として大会に参加。前日(12日)と合わせ2試合に登板した。

準決勝の相手は、今夏、ポニー全日本選手権3連覇を達成した江東ライオンズ(東京)。そんなチームに大輝君は、真っすぐで押した。6回、74球、奪三振5。打たれた安打は2本、2点を失っただけだったが、1―2で敗れた。

チームを指導する佐々木将監督は、金足農時代の95年夏、甲子園ベスト8の経験を持つ。試合後、球場の外で最後のミーティングが行われた。話をする前にと、佐々木監督は母校の先輩を選手に紹介する。

その先輩とは、84年に金足農が初めて甲子園に出場したときの主将・長谷川寿さん(青山学院大―ホンダ、ホンダ監督)。春のセンバツでは、甲子園初勝利を挙げ、優勝した岩倉に敗れたが4―6と善戦した。

長谷川さんは選手に「相手は強いと聞いていました。そのチームといい試合をしたことを胸に刻んで、秋田に帰ってください。そして甲子園を目指して頑張ってください」と言葉を送った。

長谷川さんらは、センバツでの経験をその後の東北大会優勝、夏の大会へとつなげ、甲子園では準決勝まで勝ち上がった。

それから38年。舞台は違うが東京の強豪チームとの対戦は、秋田中央ポニーの選手にとって何物にも代えがたい財産になる。大輝君は「この大会での経験を、今後の野球人生に生かしたい」とキッパリ。

84年、そして今回とメディアに携わる者として現場を体験した私には、長谷川さんの言葉も大輝君の言葉も共感できた。

佐々木監督はこう言う。「今日、学んだことが明日すぐ結果になって表れなくてもいい。高校に行ってから、あるいは社会人になってからでもいいんです」。伝統というバトンはこうして先輩から後輩へと受け継がれていくものだと、あらためて実感した。【藤原功】